2003年3月10日 気象庁 気候・海洋気象部発表
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【予想される天候】
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◆夏(6 〜8月)平均気温は,平年並となる可能性が大きく,その確率は50%です。
◆4〜5月は天気は数日の周期で変わるでしょう。
東日本と西日本を中心に平年に比べ晴れる日が多いでしょう。
この期間の平均気温は東日本,西日本では高く,北日本,南西諸島では平年並でしょう。
降水量は東日本と西日本では少なく,その他の地方では平年並の見込みです。
◆6〜7月は平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。
その後は平年と同様に晴れの日が多い見込みですが,曇りや雷雨となる時期があるでしょう。
◆6〜7月(南西諸島は5 〜6月)の降水量は北日本と東日本日本海側で多く,
その他の地方では平年並の見込みです。
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夏(6〜8)月平均気温の予想される各階級の確率(%)
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【解説】
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下の表は最近10 年の夏(6〜8月)の天候の特徴である。
1993年は北・東・西日本で冷夏となり低温・多雨・寡照だったが,
1994年は全国で暑夏となり高温・少雨だった。その後は北日本をのぞき,
気温は平年並〜高温となることが多かった。北日本では年々の変動が大きかった。
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最近10 年の夏(6〜8月)の天候
青は夏にエルニーニョ,橙は夏にラニーニャ現象が発現していた年。
気温の階級は −:低い 0 :平年並 +:高い *はかなり低い(高い)。
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最近の夏(6〜8月)の天候
東日本の夏(6〜8月)平均気温平年差の経年変化をみると,1970年代後半から年々の変動が大きく,また上昇傾向を示している。 他の地域でも上昇の傾向が見られる。
6 〜7 月の2 か月間降水量(ほぼ梅雨期間の降水量に相当)平年比の経年変化を見ると、西日本太平洋側では、1990 年以降では1993 年の多雨,1994 年の少雨が顕著である。最近の3 年間は平年を下回った。一方,北日本では最近の5年間は平年を上回っており,多雨傾向である。
台風接近数は1990 年前後に多かったが,昨年も8個と多かった。
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最近の夏の循環場
極東中緯度高度指数(太平洋高気圧の強さの指数)が正偏差の場合,高気圧におおわれ高温傾向となる。
一方,オホーツク高指数(オホーツク海付近の高気圧の強さの指数)が正偏差の場合,オホーツク海高気圧が発生し,
北・東日本の太平洋側を中心に北から冷たい空気が入って低温やぐずついた天候となりやすい。
1990 年代後半以降は両指数ともに正偏差の傾向を示しているが,ここ数年は平年並に戻る傾向がある。
北半球の中緯度(30−50゜N )の850hPaと300hPaの高度差(層厚)を
温度に換算した量(層厚換算温度→およそ対流圏の平均気温とみなすことができる)は
およそ対流圏の平均気温とみなすことができる。
2001年から2002年の前半にかけて北半球中緯度では大気の気温は平年を上回っていたが,
2002年後半からは平年並に戻りつつある。
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熱帯の大気・海洋と日本の天候
エルニーニョ現象が2002年春に発生し,4季節近く続いている。
しかし,2002年末頃から基準値との差は減少し始め,2003年2月には+0.6℃まで低下し,
南方振動指数もほぼ平年並になった。
現在のエルニーニョ現象は,春の期間中に終息すると予測される。
(→海況・エルニーニョ参照)
夏以降,エルニーニョ監視海域の海面水温は基準値に近い値で推移すると見られ,
この夏にエルニーニョ現象が継続している可能性は小さい。
従って,エルニーニョ現象による日本の夏の天候への影響は小さいと予想される。
東日本,西日本の夏平均気温は,西部太平洋熱帯域の海面水温との相関が高い。
この海域の海面水温は1998 年春以降かなり高い状態が続いていたが,昨年の後半から次第に減少し,
2003年2月には+0.1 ℃とほぼ平年並となった。
今夏のこの付近の海面水温は平年並と予想されているため,
太平洋高気圧の日本付近への張り出しも平年並とみられ,
東・西日本の夏の平均気温は平年並の可能性が大きい。
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まとめ
太平洋赤道域の大気・海洋の状態は現在エルニーニョ現象の衰退期にあり,
春の期間中に現在のエルニーニョ現象は終息すると予測される。
この夏にエルニーニョ現象が継続する可能性やラニーニャ現象が発現する可能性は小さい。
また,この夏の西部太平洋熱帯域の海面水温は平年並と見込まれ,
太平洋高気圧の日本付近への張り出しも平年並とみられる。
また,各種統計予測資料からも,夏平均気温はほぼ平年並と予想される。
以上のことから,夏(6〜8月)平均気温は平年並の可能性が大きい。
梅雨期間(6 〜7月,南西諸島は5 〜6月)降水量については,
各種統計予測資料によれば,北日本と東日本日本海側で多雨傾向が明瞭である。
また,今夏にオホーツク海高気圧が強まる時期があると予想する資料があり,
北日本を中心に寒気が入って天気がぐずついたり,
梅雨前線の活動が活発になる時期があると予想される。
また,最近数年は,北日本で多雨傾向である。
以上のことから,梅雨期間降水量は,北日本と東日本日本海側で平年より多く,
その他の地方では平年並の可能性が大きい。
なお,今後太平洋赤道域の大気・海洋や北半球循環場の推移等を注意深く監視し,
必要に応じ予報を見直すことにしている。
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東日本の夏(6〜8月)平均気温平年差の経年変化
細線:東日本夏平均気温 太線:5年移動平均
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台風接近数の経年変化
細線:台風の本土への接近数 太線:5年移動平均 点線:平年
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西部太平洋熱帯域の海面水温偏差の推移
細線:月平均 太線:5か月移動平均
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西部太平洋熱帯域の夏の海面水温平年差(縦軸℃)と
西日本の夏平均気温平年差(横軸℃)
2 桁の数字は西暦年(下2桁)(1990年以降のみ)
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資料提供:気象庁 |