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『気象人』 the mag for kishojin : 気象の本棚
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2003年8月4日更新
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平凡社新書112 『火星の驚異』
著者・小森長生
発行所・株式会社平凡社
初版・2001年11月19日
(C)KOMORI Chosei 2001 Printed in japan
ISBN 4-582-85112-6
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【本文より引用】
「火星は地球軌道のすぐ外側をまわる惑星で、ほぼ2年2ヶ月ごとに地球に接近してくる。(中略)大接近はほぼ15年おきにおこるが、近日点のすぐそばで起こるような大接近は、そうめったにあるものではない。そのまたとない理想的な大接近が2003年8月27日におこる。このとき、地球と火星の距離は5600万キロメートルを切るほどになり、マイナス2.9等のすばらしい明るさの赤い姿を見せてくれるだろう。これに準ずる大接近は2050年8月におこるはずで、この2回が21世紀の二大火星イベントである。」
「火星の表面気圧は平均6ヘクトパスカルで、地球の成層圏の高度35キロメートルあたりの気圧に相当するほどに希薄である。(中略)火星大気中には水分もわずかながら含まれているが、それは気体(水蒸気)か固体(氷晶)のいずれかである。現在の希薄な大気中では、水の沸点が0℃以下になってしまうため、液体の水は存在できないのである。したがって雨は降らず、火星の表面は極度に乾燥している。ただし水は少ないとはいえ、あとでのべるように、極冠や地下には水としてたくわえられているし、大気中の水蒸気が上空で氷晶からなるうすい雲をつくることはある。
探査機がとった火星表面の写真を見ると、(中略)希薄な大気とはいえ、かなり強い風がたえず吹いていることがわかる。これまでの地球上からの望遠鏡観測でも、ときどき火星表面をおおいかくしてしまうほどの砂あらし(大黄雲)の発生が知られていた。火星大気中には、こうして舞い上がった微小なダスト粒子が、かなり浮遊しているものとみられる。火星の空が地球のような青空でなく、淡いピンク色をしていることが多いらしいのも、そのことを物語っている。」
(P14〜「第1章 火星とはどんな星か」より)
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火星は、日一日と距離を縮め夜半前の東の空に明るく輝き始めている。
現在の視直径は20″、明るさはマイナス2等級にまで成長している。7月17日には中南米で火星が月に隠れる火星食も観測された。
一生に一度の超接近である。過去に今回を上回る接近があったのは5万7千年ほど前のことであり、この次に今回以上に接近するのは2887年、なんと884年も先のことになる。
地上から見る火星の視直径は最も接近する8月27日に最大になるが、9月中頃までの1ヶ月あまりは視直径が20″を超えてかなり大きい。一方、太陽が真正面から当たる「衝」は8月31日になるので、その日を中心に前後何日かを連続すれば、火星面の模様がかなりの範囲まで見られる。はっきり見るにはある程度の天体望遠鏡が必要だが。周囲があまり明るくない場所なら南の低い空に肉眼でも赤く光る姿が目に入る。
もっとも接近する時刻は8月27日の夕方、18時47分(東京では18時42分)である。このチャンスをとらえて火星探査機が来年1月、火星に集結する。ヨーロッパと米国による火星を周回する探査機、着陸用の無人探査車、日本の「のぞみ」、現在周回中の探査機など、いずれも飛行中の7基である。
「火星に水があるのか、過去に温暖な気候があったのか、生命はいたのか」など幾多の謎が明かされよう。
火星は古代ローマ人から春の神、農業の神「マルス」として崇拝され、後に戦さの神に変わった。
火星の英名「マーズ MARS」は古代ローマが発祥であり、3月をマーチ(march)と名付けたのもこのマルスに由来している。古代から人々の注目を集め魅了してきた、地球の姉妹星「火星」がもうそこまで来ている。
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森川 達夫(もりかわ・たつお)
1923年 三重県に生まれる。
1945年 中央気象台付属気象技術官養成所(現気象大学校)卒業、
津地方気象台勤務。
1957年 航空自衛隊気象幹部。
1968-1998年 財団法人日本気象協会。
2002-2003年 株式会社ウェザーマップ技術顧問。 気象予報士、技術士(応用理学)。
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