特別コラム「昔の予報官」

<< 最初 < 前 10 11 12 13 14 次 > 最後 29 >>
温暖化と台風
2010.9.24
台風9号が今年9月8日、日本海から福井県に上陸して東日本を通過し、各地に甚大な豪雨禍をもたらした。
今年の台風発生数は9月10日現在10個で平年より少ないが、今夏の気温は観測史上最高の異常な猛暑であった。地球温暖化は今後台風にどのような影響を与えるのだろうか?
 
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2007年の報告書の中で次のように述べている。「温暖化によって、台風やハリケーン、サイクロンなどの熱帯低気圧は、発生数は減少するが、風速は強いものが多くなる」

 日本の海洋開発機構では、21世紀末における熱帯低気圧の発生状況を予測した。それによると、大気中の二酸化炭素が増加して海面水温が高くなり、ハワイなど東太平洋や高緯度でも発生するようになる。熱帯低気圧の数は現在よりも減少するが、一方、風速45メートル以上の強い台風の割合が現在の2倍近くに増えるという。

ではなぜ発生数が減るのか。温暖化により海面からの蒸発が盛んになり上空で熱を放出する。このため、上空と海面の温度差が小さくなり上昇気流が弱まって台風の発生が抑えられる。
しかし、どこかの海域で下層と上層の温度差が大きくなると上昇気流が強まり、次々と積乱雲が成長して強力な台風に発達していくことになる。

気象庁の統計では、台風の発生数は1990年以降は減少しているが、風速は2000年以降の台風では強まっている傾向があるという。
世界の気象異変
2010.8.18
連日猛暑の日本。世界の各地でも異常気象が起きている。

ロシアは記録的な暑さ、中国では大雨つづき。季節が逆の南米では大寒波。
これらの原因の一つは上空の偏西風の異変とされる。

偏西風とは、地球の上空を西から東に流れている西風のことで、この流れが蛇行することにより地上で低気圧や高気圧が発生する。
 
ロシア: 西部とシベリアで猛暑。 日平均気温が平年より9〜10℃高い日が長くつづき「130年の観測史上最も暑い夏」という。水死者は6.7月で2000人超。干ばつで小麦価格が20%上昇した。

中国南部: 6月中旬からの大雨で7月23日現在死者743人。世界最大の三峡ダムは水位が満水時の175メートルに近づいている。6つの小型ダムが決壊した。     

南半球(冬): 寒波で200人以上が死亡。 ボリビアは過去初めての雪、ブラジル西部で寒さのため家畜2万頭が死亡

これら熱波、寒波の原因は偏西風の異変にある。
北半球の偏西風は7月から南北に揺れて北極寄りに大きく波打った。このため内側には高気圧ができて暖かい空気をはき出すこどになった。
反対に、南半球では風が蛇行して赤道側に波打ったため南極からの冷たい空気を引き込み、大寒波となった。中国の大雨はインド洋の海水温が上昇して梅雨前線を刺激したためという。
風力発電 日本は伸びず
2010.8.2
 世界自然エネルギー白書2010によれば、自然エネルギーは風力発電を中心に大きく伸びたが、日本では風力発電はふるわず、世界の潮流におくれをとっている。(朝日新聞 2010.7.22)

*低コスト 世界は順風
 09年、EUは新設電源の60%、アメリカは50%以上が水力を含む自然エネルギーだ。特にEU、米国ともに発電コストの安い風力が好調で、新設の39%が風力だった。
 世界風力エネルギー境界(GWEC)によると、09年の世界の風力導入量は3700万キロワット、5年前の3.3倍にまで伸びている
 
 風力発電量のトップ3はアメリカ、ドイツ、中国。とくに中国、米国で建設が急増しているが、日本ではほとんど伸びず累積量は206万キロワットと世界13位の有様だ。
 太陽光発電は浮き沈みが大きく、世界一のスペイン市場でさえも崩壊した。太陽光発電を高く買いすぎたことが原因とされる。
 コストの安い風力発電が日本で増えることが望まれる。
新型雨量計 富士山頂に
2010.8.1
 富士山頂では、雨が横や下から吹き付けるため、これまで雨量を正確に把握できない弱みがあった。
 これを補うため、7月18日、新型雨量計が山頂(3776メートル)に設置され観測実験が始まった。
 通常の雨量計は受水口が上向きに開いているが、新型は直径20センチの球形で、表面が12区画に仕切られており広い方向の雨をカバーすることができる。また雨の吹き付ける方向ごとの雨量も測定することが可能とされている。
短時間豪雨をとらえる
2010.7.31
 1時間80ミリを超える猛烈な雨は日本列島でこれまで年間11回程度だったが、この2年間は18回にまで増えている。
 中でも今年の豪雨は条件がそろっている。例年の梅雨期は日本列島の北にオホーツク海高気圧が居座るはずなのに、今年は逆に南からの暖かく湿った空気が日本列島に流れ込んだ。加えて、上空の偏西風が蛇行して北からの寒気を引きずりこんだ。このため大気の状態が不安定になり短時間豪雨や雷雨が頻発した。
 国交省は狭い地域の豪雨を捕らえるための高性能レーダーを東京ほか3大都市圏に導入した。7月5日東京都板橋区で1時間107ミリの豪雨のときも新型レーダーが雨の強まる一部始終を映し出していた。
 新型レーダーは、ミサイルの追跡にも使われる「Xバンドレーダー」と呼ばれる物で、2種類の電波の反射から、240キロメートル四方の雨雲や降雨の状況を認識することができる。首都圏、名古屋、京阪神で試験運用がはじまっており、今年度中に福岡、広島、静岡などで計14台が配備される計画である。
<< 最初 < 前 10 11 12 13 14 次 > 最後 29 >>