特別コラム「昔の予報官」

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北京の人工消雨
2008.8.26
 8月8日夜、北京では雲ひとつない星空がひろがって、中国全体がオリンピック開会式でわいていた。その最中、200キロ離れた河北省保定市の農村一帯は突然の集中豪雨に襲われていた。農民の命であるトウモロコシの畑には、鉄砲水が頭の高さまで押し寄せたそうである。(読売新聞 関泰晴)
 当日、北京気象局は周辺の雨雲に向かって化学物質を積んだロケット約1100発を発射し、計画通りに「人工消雨」を行った。史上最大の規模である。

 北京の8月8日は過去30年のうち降水確率が最も低いが、それでも47%と雨が降りやすい日にあたる。
 中国は50年も前から人工降雨の経験をもっており、2004年には専用機による上空からの薬剤散布と、薬剤入りロケット610基を打上げている。北京市気象局でも、五輪決定から今日までの6年間、ロシアの技術も取り入れて人工降雨を行ってきた。

 今回の人工消雨は、打ち上げた薬剤(沃化銀と思われる)を凝結核として雲粒が大きな水滴に成長し、予想した通りに周辺に移動した。その結果が、北京は晴れ、農村は豪雨になったと見られる。
 打ち上げた薬剤は恐らく全て地上に落下したと思われる。農業や環境への影響は問題ないのだろうか?
「特異日って?
2008.8.20
 晴れや雨の天気が、ある特定の日にかぎってほかの日より高い確率で現れる日を「特異日」と呼ばれる。
 たとえば、雨の降りやすい特異日は梅雨時の6月28日や、秋雨の9月15日。そして不思議なのは台風の9月17日と26日。東京の晴れの日は、誰もが知る10月10日と11月3日である。
 「特異日」なるものを初めて提唱したのはドイツの気象学者シュマウスである。1930年代、特定の日に高い確率で同じ天気が現れることに気づいて、[singularity]と名付けた。

 日本でも古くから「寒の戻り」「八十八夜の別れ霜」「二百十日」など同じような考え方が受け継がれて来た(朝日新聞)。
 しかし、近年はヒマラヤ山脈の氷河が融解したり、この8月には北極海北西部の海氷がこれまでもっとも急速に減少するなどはげしい温暖化現象が頻発している。従来なじみのある特異日や、「二十四節気」の季節感にも大きな変化があらわれるのではないか。

  現在の、特異日(全国的)をいくつかあげてみよう。
 (%は東京管区気象台1967〜96年の統計)

 晴れやすい日   
  4月5日 73%   5月13日 50%   8月10日 53%
  10月10日 60%  10月23日 80%  11月3日 80%

 雨の降りやすい日 
  6月28日 47%   

 寒の戻りの起こりやすい日
  4月6日・23日
火星には やはり水があった
2008.8.5
 NASA(米航空宇宙局)とアリゾナ大は7月31日 火星に水があったことを検出したと発表した。

 米探査機フェニックス・マーズ・ランダーは火星の北極付近の地中から氷を掘り出して水を検出した。(マーズ 'MARS':火星)
 火星の極域には氷が大量に存在することがこれまで信じられてきたが直接採取して検出したのは初めて。生命にとって不可欠な水の存在が確認されたことでいよいよ新たな探査が進むことになる。

 フェニックスは地下5cmから土を掘り出して加熱していった。氷の融点である0℃に達したとき温度の上昇速度が鈍くなり、微量の水蒸気も検出された。地球上で氷を加熱した場合、1気圧のもとでは0℃で融点となり、その後は急に温度の上昇が鈍くなるという水の特性がある。今回も同様の経過から水の存在が確認された。

 現在の火星の平均気温は−59℃だが、大昔は暖かく液体が存在した可能性があり、これまでの探査で水の流れたような地形や水の中でできたとみられる岩石も発見されている。ひょっとすると度肝を抜くような生き物が存在したのかもしれない。
 今月半ばに行われる、生命存在の可能性に関するNASAの重大発表が待ち遠しい。
金星のなぞ
2008.7.30
 「明けの明星」「宵の明星」と呼ばれ、鮮やかに大きく光り輝くのが金星。地球の兄弟星と言われているが、実態はまるで異なり多くのなぞに包まれている。

 金星は大きさも密度も地球とほぼ同じで、太陽からの平均距離も地球の距離の0.72倍と比較的近い軌道を回っている。このことから、地球と同じように46億年前の同じような環境のもとで誕生したものと想像されている。
 ところが、現実の姿は地球とは全く違う。地表の温度は460℃、まさしく「灼熱の世界」であり、海は存在せず全体が数億年前の溶岩のままである。灼熱の原因は、温暖化の悪玉CO2が大気の実に96%以上を占めていることによる「温室効果」と見られている。
 回転の仕方も特徴的で、太陽系の中ではただ一つ逆向きに自転しており、一回転するのに243日もかかるという超低速である。

 2年後の2010年に日本の金星探査機PLANETICが打ち上げられ、数々の謎に挑むことになる。
 (日経新聞 編集委員 賀川雅人 より)

 金星には、ほかに興味深いエピソードがあります。今後のコラムにご期待ください。
梅雨明け
2008.7.22
 気象庁は19日午前、「東海、関東甲信、東北で梅雨明けしたとみられる」と発表した。平年より1〜8日早い。これで日本列島すべてが梅雨明け、夏本番の到来である。
 
 梅雨明けとはどんな状態か。
「梅雨前線が離れ、少なくとも1週間先まで太平洋高気圧が広がって、安定した晴れの天気が続くと判断される状態」で、7・8人の予報官が前後1週間の実況と予報を照らし合わせて判断する。

 さて、「梅雨明け10日」の暑い晴天は「熱中症」が案じられる。
 晴れて気温が急上昇し、体が暑さに慣れていないため熱中症が多発しやすい。炎天下の激しい運動や強い日射しを避ける。外出時は帽子、日傘も効果がある。予防には水分・塩分の補給と風通しが大切である。
 熱中症は屋外だけではない。意外にも発生の60%は屋内で、体育館、浴室、湿った密閉の部屋は注意を要する。
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