◆南極変色 地球異変−気温−上昇
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南極大陸から南米に向けて細長く突き出た南極半島では、
夏になると藻類が大量発生し、氷河をピンクや緑色に染めている。
3月上旬、夏の終わりの時期に降ったのは雪ではなく雨だった。
日中の気温も氷点下にはならなかった。
南極半島は低緯度に張り出しているため、他の南極地域より暖かい。
氷河からの雪解け水で真っ黒なぬかるみができ、
海の方からは湯気が絶え間なく上がっている。
直射日光のあたる地面の温度は高く25℃にもなる。
南緯65度にあるベルナツキー基地における1940年代からの観測では、
この50年間に年平均気温が約2.8℃も上昇した。
地球全体の平均気温の上昇率100年に0.74℃と比べてはるかに急激な上昇である。
一方、南極の氷床の厚さは平均2445メートル、
世界中の氷の体積の9割を占めている。
国連の政府間パネルIPCCは、07年の報告書で
「南極氷床が縮小している可能性はかなり高い」と報じている。
最近の観測では、西南極で氷床が急速に薄くなっており、
ここの氷が全部溶ければ海面が5〜6メートル上昇するといわれている。
◆「しらせ」帰る
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南極観測船「しらせ」が、4月12日東京港に帰ってきた。
25年にわたる南極航海の最後の花道である。
「しらせ」は1983年に就航、「宗谷」「ふじ」につづく3代目の観測船で、全長134メートル。
厚さ1.5メートルの氷を割りながら時速1.9キロで走行する世界最強レベルの砕氷船である。
この1年間の観測では広範な氷床調査が行われた。
氷床と岩盤の間の水脈は、すでにロシアのボストーク基地の下に
琵琶湖より大きな湖があることが分かっている。
そこで新たな湖の発見と、光も到達しない世界の生態系と生命進化の謎に取り組んだ。
さらに、氷層の厚さの変化を調べることで地球温暖化の予兆を把握し、
温室効果ガスの測定をおこなってきた。
「しらせ」の後継船は今年11月の就航に向けて、舞鶴の造船所で建造が進んでいる。
氷床との衝突に対する配慮、大型ヘリの増強などの改善のほか、
画家や音楽家教員など一般人の乗船も検討されているそうである。
東京晴海埠頭からの出航は毎年11月14日の定例である。
今年もその日が穏やかな晴天でありますように。