特別コラム「昔の予報官」

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夏の紫外線
2008.7.7
これからの季節、真夏は紫外線が最も強い。
紫外線にはA、B、Cの3種類があり、波長の長い方から UV-A・UV-B・UV-C。波長の短いものほど人体への影響が大きい。

UV-A:
UV-Aの紫外線量は5月の方が多い。
日照時間と太陽高度では6月がピークだが、5月の方が晴れ間が多いからである。
UV-Aは地球に届く紫外線のうち9割を超えており、肌を黒くしてシミやそばかすのもとになる。

UV-B:
もっとも怖い紫外線はUV-Bであり7〜8月に強い。
UV-Bは約25km上空のオゾン層に吸収されるため、地上に到達する年間の量は多くはない。しかし、7〜8月には太陽の高度角が大きくなり、その分オゾン層を通過する距離が短くなって、地上に到達するUV-Bの量が多くなる。

散乱光
われわれの浴びる紫外線は、直接届く直射光と、空気分子や霧、雲等で散乱する散乱光とが混ざりあっている。
紫外線対策で重要なのは散乱光である。直射光が届かない日陰でも紫外線が入りこんでくる。傘や帽子などの日よけは、直射光である赤外線に対しては有効だが、散乱光がメインの紫外線に対しては十分ではない。
 
UV-Bによって肌が真っ赤に日焼けすると皮膚のDNAが損傷し、強い日焼けを繰り返すと皮膚がんになる恐れがあるという。
4月〜9月の晴れた日は午後2時頃まで長く陽に当たるのは避ける、とくに真夏の太陽は20分以上浴びないこと、また肌には日焼け止めクリームを使うのもよいとされる。
 
UV-C:
UV-Cは、直接当たれば最も危険だが、幸いにもオゾン層が全部吸収してしまうので問題はない。

気象庁は5月1日から紫外線情報を発表しており、国立環境研究所でもインターネットで紫外線情報を提供している。
火星に水があった/火星のプレート
2008.6.26
米航空宇宙局(NASA)の火星探査機フェニックスが5月26日、火星の北極に近い北緯68度の平原に軟着陸した。
6月20日の発表では地表近くに氷が存在することが確認された。それによると、温暖な頃の火星には液体の水が存在し、微生物などが生きられる環境にあった可能性が高まったという。

火星の大きさは地球の半分より少し大きく、2年2か月ごとに地球に接近する。
火星にある幾つもの巨大火山のうち群を抜いて高いのがオリンポス火山、太陽系で最大の火山である。
「オリンポス」の名はギリシャ神話に由来する。

直径600km、高さ2万7千メートルで、
裾野は高さ6千メートルの絶壁がぐるりと取り巻いている。
火星の火山はなぜこのように巨大なのか?
その謎は、地表が単一のプレートで覆われていることにある。プレートは移動することがなくマグマが同じところで噴出し続けるからである。
またプレートが単一な一枚であるため、衝突も地震も起こることはないと見られている。 

それと異なり、地球上ではプレートが十数枚あり、中には1年に10cmも動くものがある。
プレートテクトニクス(近代地震観の核心をなす理論)によれば、
厚さ約100kmのプレート同士が衝突すると褶曲(しわ)や断層が生じそこに地震が発生する。四川大地震、岩手・宮城内陸地震そのほか世界中のどの地震も例外ではない。
 
被災地の方々、気持ちをしっかりとお元気で頑張ってください。
南極の日の出
2008.6.17
南極の極夜に 太陽が現れた。
南極は7月11日まではまったく日の目を見ない1日じゅう暗闇の世界である。
ところが今月2日午前11時半、この真っ暗な真冬の南極昭和基地に太陽が現れた。水平線上に黄金色の太陽がまぶしく輝いた。
「スワ 幻の太陽!」
49次観測越冬隊員は驚いてシャッターを切った。
ところがこの太陽、正体は蜃気楼であった。
見えたのは太陽だけでなく周りには氷山の姿もうつり、それらがひっくり返ったり重なったりして1時間以上もこの予期せぬ一大ショーが続いたという。

この日の最低気温はマイナス36℃、上部の暖かい空気と水面近くの冷たい空気の間に密度の差が生じた結果、水平線の下にある太陽の光が屈折して浮き上がって見えたためという。
(朝日新聞 中山由美氏のレポートより)

蜃気楼は3つに分けられる。

上位蜃気楼:
温度の低い海面に接する空気が冷やされ密度が大きくなると、光は密度の高い冷たい方へ屈折する。その結果、水平線の下に隠れて見えない風景が浮き上がって見える。通常はこの種のものが多い。
オホーツク海沿岸、富山湾周辺、琵琶湖周辺などで発生する。
上杉謙信もこれを目にしたとの記述がある。

下位蜃気楼:
アスファルト、砂原の地面付近で起こる。下方の空気の密度が低いため光は上向きに屈折する。ビルや島影が浮かんで見える、「浮島」、「逃げ水」などである。 頻繁に起こる。

側方蜃気楼(鏡映蜃気楼):
物体の側方に映像が現れる極めてまれな現象である。九州の八代海、有明海の「不知火」はこのタイプで、点々と沢山の光が横に連なって揺らいで見える。
天気予報オリンピックの金(きん)は
2008.6.2
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)
8月北京オリンピックのために現地の天気予報を競うことが決まった。
世界気象機関(WMO)の決定によるもので、さきに2000年のシドニーオリンピックの際にも行われた「国際競技」、日本は今回が初めての参加である。

北京の8月は4日に1回は雷雨があるという気まぐれな空模様だが、この予報競争に勝ち名乗りをあげるのは誰か?
参加するのは日本の気象庁気象研究所、アメリカ大気研究センター、中国気象科学院と、カナダ、オーストラリアなど計11機関。
競技種目は北京市周辺の天気を予報することで、「6時間後までの予報」と「6〜36時間後の予報」の2種目。
日本は後者の36時間予報にエントリーした。
この予報は「アンサンブル予報」の部門で、気圧や気温の初期値を少しづつ変えて計算を繰り返し予報を導きだす。

本番は7月24日からオリンピック開催期間(8月8日〜24日)にまたがる1ヶ月間。
予報の範囲は北京市を含む南北1700キロ、東西1500キロが対象で、予報結果を毎朝中国側に送り当日の天気予報に活用される。

長時間におよぶマラソンをはじめアウトドアの競技には大切な予報である。日本ガンバレ!
空飛ぶペンギン
2008.5.26
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)  
4月1日エイプリルフールの日に、ペンギンが群れをなして飛んでいる写真が話題になったが、日ならずして合成写真だとばれてしまった。
やはりペンギンは空中を飛ばないらしい。
ところが、5月7日付朝日新聞に空を飛ぶ写真が出ているではないか。
でもよくよく見ると、「空」ではなくて、水面かすめるようにして飛んでいる。
場所は南極半島のまわりの海面、まるでイルカのような飛び方である。
これは、ポーパシング(porpoising)とよばれる行動で、「イルカのように飛ぶ」ということだそうである。
(porpoise は「ネズミイルカ」)
 
朝日新聞・安田朋起記者の解説によると、ペンギンはアホウドリ、カモメなどと同じ海鳥の仲間だが、進化する間に空中を飛翔する機能をうしない、それに代わって海中を快速で泳げるよう体形を紡錘型に変化させたのだそうである。
ポーパシングをする理由は、「速く泳ぐため」とか「天敵から逃れるため」などといわれる。
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