特別コラム「昔の予報官」

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パーソナルな初雪
2006.12.1
高橋 和也『気象人』編集長
そろそろ北陸あたりからも、初雪の便りが届く時期になった。しかし、自分の中では初雪の日付よりも、積雪開始のほうが冬の目安としては重要だった記憶がある。なにせ、自転車に乗れなくなってしまうから。

大阪から金沢に移ったのは小学6年のとき。事前から両親に聞かされてはいたものの、日本海側における秋から冬の天気変化が、太平洋側とはあまりに違うことに驚かされた。とにかく、天気が良くない。そして、暗い・・。

冬型の気圧配置は、場数を踏むごとに「固形物」の降ってくる割合がどんどん高くなってくる。11月から12月初めにかけては対流活動が活発になり、氷アラレ(まれにヒョウ)が派手な音を立てながら屋根を叩くようになるのだ。ついでに、地響きするような雷鳴も。

このとき屋根や道路、あたり一面が一時的にせよ真っ白になることがある。「歩きにくさ」の点では雪とさほど変わりはないのだが、氷アラレには雪の結晶が含まれていないため「雪」にはカウントされないのだそう。外はどう見ても白くなっているのに、初雪にならないことが何となく奇妙だった。

北陸では初雪がいつになるかということよりも、雪(あるいは固形物)が降りやすい状態がいつまで続き、どのくらい地面にたまるのかということのほうが関心が高い。ひとまず、2日から3日の寒気では、山沿いこそ雪が積もると思われるが、金沢など平野部では氷アラレによる「似非雪化粧」がある程度だと見ている。
もしかすると
2006.9.22
高橋 和也『気象人』編集長
台風14号の動向に注目が集まっている。なにしろ今年発生した台風では最強の910hPaを記録、22日夕方には少し気圧を上げてきたが、依然として「猛烈な」勢力を維持している。

強さだけでなく、コースもかなり心配のタネ。小笠原地方をこれほど強力な台風が通るのは、おそらく23年ぶり(1983年台風17号)のことではないだろうか。このときは、父島の三日月山(海抜200m)で78.9m/sの突風を記録している。

「父島」測候所は海抜3mの場所にあり、最大瞬間風速の記録はまだ60m/sを超えたことがない(1968年8月以来)。しかし、今回は台風が非常に強い勢力で、しかも父島が台風のすぐ東側、危険半円に入る可能性があるのだ。

こうなると、記録的な突風が吹くおそれがある。まさに、23年前の三日月山のごとく・・?父島への最接近は、23日午前3時前後。果たして・・。

 後記:父島では22日夕方の段階で「車の運転は、ハンドルが取られるおそれがあります」と放送しているようだ。本当に危険な状態になってきた。
[サッカーW杯] 気温が起こす!?ドルトムントの奇跡!!
2006.6.22
増田 雅昭(気象予報士)

「こんな時間にサッカーをやること自体が犯罪だ」

クロアチア戦後にジーコ監督が語ったように、
一次リーグの二試合とも、午後3時からの灼熱の中でのゲームだった日本代表。
後半は選手の足が止まって攻めきれずに、勝ち点は二試合で1。
リーグ最後のブラジル戦に、2点差以上で勝利するしか
決勝トーナメントへの道が開けないという崖っぷちに追い込まれました。

しかし!あきらめるのはまだ早い!!
奇跡が起きる芽が出てきたんです。
今までさんざん気温に苦しめられてきた日本代表が、
気温によって奇跡を起こすかもしれないんです!

大会13日目(21日)までの全40試合、
一試合あたり両チーム合わせての平均得点は2.4点。
ところが、調べてみてビックリ。
気温が下がるにつれて得点が増えてるんです!
試合開始時の気温が、23℃以下の試合で2.8点、22℃以下で3.1点、
21℃以下の試合で3.8点、20℃以下ではなんと4.0点!
気温が下がるほど、選手の動きが良くなって、
終盤まで攻め続けられるということなんでしょう。
しかも、20℃を下回る試合は、全て「2点差以上」で勝負が決まっています。

ブラジル戦の行われるドルトムントの試合中の気温は、
前半が16℃前後、後半が14℃前後と、肌寒いくらい。
(北海やオランダ方面から流入する寒気が、これまでの予想より強まってきました)
気象条件的には、2点差以上の勝利を手にする可能性は十分!
こうなったら奇跡を信じるしかないでしょう!!
攻めて攻めて攻めまくれ!がんばれ日本!!!


あとは、、、
気温が逆に敵の味方をして、ブラジルが2点差以上のボロ勝ち・・・
なんて事にならないように祈るばかりです。
[サッカーW杯] 日本代表に立ちはだかる新たな敵
2006.6.19
増田 雅昭(気象予報士) 

「あつい…」

試合前、ピッチに出てきた中澤選手が
眩しい陽射しに目を細めながら、思わず口にした言葉。
クロアチア戦の行われたニュルンベルクでも、
強い陽射しと厳しい暑さが、日本代表を迎えました。
ドイツ気象局の発表によるスタジアムの気温は、前半が27℃、後半が28℃。
ピッチレベルでは、間違いなく30℃以上になっていたと思われます。

オーストラリア戦で暑さを経験済みの日本代表、
高温の中での試合運びはまずまずだったものの、攻めきれずに痛恨のドロー。
予選リーグ最後のブラジル戦で、2点差以上の勝利が必須となってしまいました。
「勝つことしか考えていない」と中田英寿選手が言うように、
ブラジル戦に全てをかける日本代表ですが、
その決戦を前に新たな『敵』が立ちはだかりそうな気配が…

『風邪』なんです。

W杯開幕以来、日本だけでなく各国選手を苦しめ続けた暑さ。
ところが、21日(水曜)頃から急激に気温が下がります。
日本代表の合宿地があるボンでも、朝晩はなんと10℃を下回る寒さに!
寒さと言えば、日本代表がボン入りした直後、
ドイツを6月としては記録的な寒波が襲い、
日本代表は冬用の防寒コートを、日本から緊急輸送したという事がありました。
その寒さのせいで、中村選手は風邪を悪化させ、
結果的に、第一戦・第二戦のプレーに影を落とすことに…。
風邪は、超一流選手やそれを管理する一流のスタッフをもってしても、
完全には防ぎきれない難敵というわけです。

これまで二戦の激闘で疲労がたまっているところへの、急激な冷え込みです。
風邪が選手達の体に付け入るには絶好の条件。
選手達としては、ゲームで戦う前に、
体調管理という自らとの戦いに勝たなくてはなりません。
奇跡を起こすには、もう誰一人として欠かすことの出来ない日本代表。
ピッチの外でも、静かで重要な戦いが待っています。
[サッカーW杯] 暑い中での戦い方を熟知していたヒディンク監督
2006.6.13
増田 雅昭(気象予報士)

1.ケイヒル
2.ケイヒル
3.アロイジ

日本戦でのラスト6分、得点をしたオーストラリアの選手です。
いずれも、後半から途中交代で出てきた選手ばかり。
ゲーム終盤、疲れ知らずの俊敏な動きで逆転劇を演出し、
昨日のコラムで書いたのとは全く逆のストーリーに…

ゲーム開始時の気温は27℃。
後半には28℃(ドイツ気象局のデータより)まで上がっていたのを見ると、
ピッチレベルではおそらく30℃以上になっていたでしょう。
暑さの中、両チームの選手とも徐々に体力を奪われ、
特にオーストラリア代表は、前半あれだけ脅威だったビドゥカが
ほとんど顔を出さなくなるなど、明らかに足が止まってきていました。

ここで日本がダメ押しの2点目を取れば勝負が決まる…
そんな中、先に動いたのはオーストラリア。
ヒディンク監督は、次々とフレッシュな選手を投入し、結果的には
途中交代で入った選手が全得点を叩き出すという神がかり的な采配に。
暑さに合わせたその経験的采配は、「名将」という名に相応しいものでした。

では、日本は動けなかったのか?
日本は坪井選手が足の痙攣(けいれん)によって退場するアクシデントにより、
交代選手3人のうちの1人を使わざる得ないという不運。
新たに怪我人が出るかもしれないことなどを考えると、
ジーコ監督も思い切って動けなかったのかもしれません。

ところで、スポーツ中に足が痙攣する要因の一つに「水分不足」があります。
日本代表など一流選手ともなれば、
もちろんゲーム中の水分補給には細心の注意を払いますが、
昨日はゲームが中断することがほとんどなく、小まめに水分を補給しづらい展開。
しかも、ゲーム時の湿度は30%前後で、体内水分を消耗しやすい状況でした。
もしかすると、中断の少ないゲーム展開とヨーロッパ特有の乾いた空気が、
坪井選手の、いや日本代表のプランを狂わせたのかもしれません。

とにかく、もう次のクロアチア戦には勝つしかなくなりました。
試合のある18日の天気は、色々な資料を見てもバラバラで、
晴れるのか曇るのか予測の難しい状況になっていますが、
気温が高い状態が続くことは、どの資料も一致。
次こそは、暑さを味方に付けるジーコ采配に期待しましょう。
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