特別コラム「昔の予報官」

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6月6日 金星が太陽面を通過する
2012.5.28
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)
先週、5月21日は金環日食で、日本中が沸き立ったほか、この日の観測で太陽の大きさが139万2千20キロメートルと確認された。
 
 続く天体ショーは、6月6日の金星である。今度は、金星が太陽と地球の間に入って一直線に並び、太陽面をバックにして金星の黒い影が東から西へと移動する。
 通過の時間は、東京で6日午前7時10分から午後1時47分まで、約6時間半である。

 ところで、金星が太陽面を通過する現象は、138年前にもあった。明治7年12月9日、これが日本の天文学に進歩をもたらす契機になったともいえよう。
 当時、日本には天文台もなく、金星の通過など殆ど知られていない。 一方、アメリカ、フランス、メキシコの3国は、日本での金星観測を申し入れてきた。太陽ー地球間の距離を測定すること、兵庫県明石の東経135度を確認することが目的である。
 明治政府は、「スワ黒船」と色めきたち、申入れを拒否する方に傾いていた。そのとき勝海舟の一言が居並ぶ大臣諸侯の胸を打ち、ガラリと空気を変えた。「これを機会に新しい知識を学ぼう」 
 外国チームの金星観測は、長崎、明石、横浜の三地点で行われ成功を収めた。これら三箇所には記念碑が建てられている。
 その後、米国マサチューセッツ工科大学が太陽ー地球間の距離を確認し、これが1天文単位(1AU)として使われている。

 金星の太陽面通過は、次回が105年後のことになる。
金環日食 あと1週間
2012.5.14
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)
21日早朝、日本では人口の3分の2が観測できる。九州南部から福島県南部の広い範囲で見られる。平安時代以来932年ぶりのことで、午前7時半ごろから5分間ほど金環日食が続く。月表面の山の隙間から太陽光が漏れて見える「ベイリービーズ現象」も見所だ。
 気になるのは当日の天気、30年間の統計によれば、晴れの確率は、東京63%、大阪50%である。晴れてくれますように。

「天の岩戸」で天照大神が洞窟に隠れ、世界が真っ暗になったのは皆既日食とされている。
「日本書紀」には、628年に起きた国内最古の日食の記録がある。
1183年には、源氏と平家の瀬戸内海での水島合戦で、金環日食に慌てふためいた源氏が敗退し、平家が勝利している。(源平盛衰記)
 明治16年の金環日食は錦絵にも描かれたが、当日は曇り空であったという。

 日食を見るには、「日食網膜症」への注意が必要。「日食メガネ」を使用すること、太陽を直視しないことである。通常のサングラスや黒い下敷きでは不十分とされている。くれぐれもご用心を。
 過去にドイツでは3500人が発症、今回も日本で1万人近くの発症が懸念されているという。
5月21日  金環日食
2012.4.27
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)
関東から九州にかけて太平洋側で、21日朝は金環日食。日本では25年ぶり、東京都心では173年ぶり。国内8300万人が観測できる、世紀の天体ショウである。太陽が月に隠されてリング状に輝く。
 源氏との戦いで平家は幾たびとなく源氏に敗れてきたが、「源平盛衰記」によると、1183年の「水島合戦」で、平家はたった一度だけ源氏に打ち勝った。その日、源氏は戦いの最中に発生した金環日食に驚き、大混乱に陥った。一方、平家は、日食が自然現象の一つと理解していたため、日食の発生を予想し戦を勝利することが出来たという。
日食の時間は、
大阪 午前6:17ー8:54(金環食 7:28-7:31)
東京 6:19ー9:02(金環食 7:31-7:37)
星を溶かす熱風
2012.4.23
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)
近くの恒星を溶かす、強烈な熱風を噴出している天体を、東京工業大学と早稲田大学の研究チームが発見した。
 地球から3600光年の距離に恒星があり、5時間弱の周期で明るさが40倍も変化している。それから約100万キロ離れたところに、ガンマ線や電子を噴出す小さな天体があり、恒星はその周囲を公転している。
 この天体は、恒星が一生を終える際の「超新星爆発」でできる中性子星の一種とみられ、半径は10キロしかないが重さは太陽の1.4倍もある。
 天体から噴出される熱風によって、恒星は加熱され溶けて蒸発しつつある。 また、剥ぎ取られたガスは赤外線を放っているという。
ポトマック さくら祭り
2012.3.29
森川 達夫(株式会社ウエザーミロ代表・気象予報士)
アメリカ・ワシントンで「全米さくら祭り」が開かれている。この3月27日、日本からの桜寄贈100年を記念して、ポトマック河畔で新たな桜の植樹が行われた。
 米政府を代表して、ミシェル・オバマ大統領夫人が挨拶、「さくらは美しさと強さが賞賛に値します。大震災後の日本人の勇気と団結を思い出させます」と述べた。

 ワシントンの桜並木は、今から100年前の1912年(明治45年)3月27日に植樹されたのが始まり。
ときの東京市長、尾崎行雄が贈った桜の苗木が、海を越えてアメリカに届いた。その苗木をタフト大統領夫人がポトマック河畔に植樹し、年月を経ていまや世界の桜の名所となった。
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