先週、5月21日は金環日食で、日本中が沸き立ったほか、この日の観測で太陽の大きさが139万2千20キロメートルと確認された。
続く天体ショーは、6月6日の金星である。今度は、金星が太陽と地球の間に入って一直線に並び、太陽面をバックにして金星の黒い影が東から西へと移動する。
通過の時間は、東京で6日午前7時10分から午後1時47分まで、約6時間半である。
ところで、金星が太陽面を通過する現象は、138年前にもあった。明治7年12月9日、これが日本の天文学に進歩をもたらす契機になったともいえよう。
当時、日本には天文台もなく、金星の通過など殆ど知られていない。 一方、アメリカ、フランス、メキシコの3国は、日本での金星観測を申し入れてきた。太陽ー地球間の距離を測定すること、兵庫県明石の東経135度を確認することが目的である。
明治政府は、「スワ黒船」と色めきたち、申入れを拒否する方に傾いていた。そのとき勝海舟の一言が居並ぶ大臣諸侯の胸を打ち、ガラリと空気を変えた。「これを機会に新しい知識を学ぼう」
外国チームの金星観測は、長崎、明石、横浜の三地点で行われ成功を収めた。これら三箇所には記念碑が建てられている。
その後、米国マサチューセッツ工科大学が太陽ー地球間の距離を確認し、これが1天文単位(1AU)として使われている。
金星の太陽面通過は、次回が105年後のことになる。