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2007年1月29日更新
片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)

【2006年12月の世界平均気温は観測史上最高】
2006年12月の世界の月平均気温は平年より0.41℃高くなり、1891年の観測開始以来最も高くなった。世界的な高温傾向は1990年代後半から顕著で、以前から数十年単位の気候変動や地球温暖化の影響が指摘されてきた。さらに、2006年秋から4年ぶりにエルニーニョ現象が始まり、この記録的な高温を後押ししたと見られている。
12月の世界の平均気温高い方の順位
1 2006年 +0.41℃
2 1997年 +0.40℃
3 2003年 +0.37℃
4 1987年 +0.28℃
5 1979年 +0.26℃

2006年12月の太平洋赤道海域の海面水温は全域で平年より高く、特に中部から東部にかけて平年を1℃以上上回った。エルニーニョ監視海域(NINO.3)の海面水温偏差は+1.1℃となり、2006年9月から上昇が続いている。


2006年12月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い



エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度





エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差
詳細な情報は「2006年12月の海況・エルニーニョ


【エルニーニョ現象の影響と見られる日本の天候】
エルニーニョ現象時の冬の気温は北日本を除いて平年並みから高い傾向があり、日本海側で雪が少なく、太平洋側で雨が多い特徴がある。2006年12月の天候は冬型の気圧配置が長続きしないなど、全般的に暖冬の特徴が現れた。

全国的な高温
寒気の流れ込みが弱く、全国的に気温が高かった。12月の月平均気温は南西諸島で平年より1.1℃、東日本と西日本で平年より0.9℃上回った。




日本海側の雪不足
冬型の気圧配置が続かず、日本海側で雪が少なかった。12月の降雪量は全国的に平年の半分以下で、北陸地方で平年の22%、北日本でも平年の50%と、オープンを見合わせるスキー場も相次いだ。雪の少ない状態は1月になっても解消せず、北陸地方の新潟や金沢市内では積雪がない状態となった。

低気圧が猛烈に発達
冬型の気圧配置が長続きしないため、低気圧が頻繁に太平洋側を通過した。特に、12月26日は南から非常に暖かく湿った空気が流れ込んだため低気圧が発達、関東地方で記録的な大雨となった。東京の12月の雨量は200.5(平年比506%)ミリに達し、観測史上最多雨量を更新した。また、1月6日から7日にかけては北海道付近で低気圧が猛烈に発達(964hPa)し、八丈島では1月としては最高の最大瞬間風速48.5メートルを記録した。
2006年12月26日9時の地上天気図(左)と赤外画像(右)
2007年1月7日9時の地上天気図(左)と赤外画像(右)


【エルニーニョ現象の影響と見られる世界の天候】
エルニーニョ現象時の世界の天候は、太平洋赤道海域周辺で特徴が顕著に現れることが多い。太平洋赤道海域東部で海水温が高くなるため雲の発生する場所が通常と異なり、南米中部やメキシコ湾周辺で雨が多く、オーストラリア西部で雨が少なくなる。また、日本と同様にアメリカ北東部で気温が高くなる傾向がある。

オーストラリアで干ばつ
オーストラリア南東部では2006年8月から雨が少なく、降水量は平年を大幅に下回る過去100年で最悪の干ばつ被害と報道された。オーストラリアは小麦の主要生産国のため、小麦の国際相場が高騰した。

アメリカ北東部の高温
アメリカ北東部では12月から暖かい空気に覆われることが多く、気温は平年を6〜13℃上回る異常高温となった。2007年1月6日はニューヨーク州オルバニーで22℃まで上がるなど、半袖姿でジョギングする人も見られた。


【エルニーニョ現象発生時にはなぜ日本は暖冬になるのか】
日本の冬は北極から流れ出す寒気の強弱によって決まる。強い寒気が頻繁に流れ込み、冬型の気圧配置が長続きすると、日本海側が大雪となる寒冬となり、寒気の影響が弱いほど暖かい冬になる。

この冬(2006年12月)の状況を上空5000m付近の天気図(右図)で見てみると、日本から太平洋北西部にかけて広く正偏差(高度が平年より高い所=気温が高い所)が広がっている。寒気の流れ込みが弱かった証拠で、同様にアメリカ東部やヨーロッパも正偏差であった。
このような天気図はエルニーニョ現象が発生している時に見られる図で、専門的には「WP(Western Pacific)パターン」と呼ばれる。

赤道熱帯海域は太陽の熱を最も多く受け取る場所で、地球大気を動かすエンジンである。このため、通常と異なる場所で海水温が高くなるとその影響が地球全体に伝わり、世界各地で異常気象を引き起こす。エルニーニョ現象が発生している冬の平均気温は全国的に平年並みか高くなることが多く、東日本では統計的に66%の確率で暖冬になるという。

一方、2006年12月と対照的だったのが2005年12月である。日本では20年ぶりの厳しい寒さに見舞われ、日本海側では記録的な大雪となった(平成18年豪雪)。このときの上空5000m付近の天気図(左図)を見ると、日本付近が負偏差(高度が平年より低い場所=気温が低い場所)となり、上空の流れも大きく蛇行している。ロシア北部で気圧の尾根が強かったため、風下側にあたる日本列島に強い寒気が流れ込んだことがうかがえる。
2005年12月と2006年12月の500hPa高度偏差図と5400mの等高度線
青色の領域は高度が平年より低い場所、赤色の領域は高度が平年より高い場所を示す。


【エルニーニョに関する参考資料】
エルニーニョ現象は世界的な異常気象をもたらすことから、日本に限らず世界各国で研究が進められている。各国の気象台でもリアルタイムで情報を公開している所が多い。そこで、エルニーニョ現象についてもっと詳しく知りたい時に役立つWebsiteや書籍を紹介するので参考にしていただきたい。

気象庁 海洋の健康診断表 「総合診断表 2.3エルニーニョ現象」
 http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/shindan/sougou/html/2.3.html
日本の気象庁では毎月10日頃、エルニーニョ監視速報を発表している。また、ホームページでは海洋の健康診断表「総合診断表 2.3エルニーニョ現象」に多くの図やデータとともに詳しい説明がある。

平成16年度季節予報研修テキスト 気候変動と季節予報 気象庁地球環境・海洋部
平成18年度季節予報研修テキスト エルニーニョ/ラニーニャ現象と日本の天候 平成18年豪雪とその要因 気象庁地球環境・海洋部
エルニーニョ現象全般から日本、世界の気候変動については季節予報研修テキストが参考になると思う。ただ、専門的な記述が多いので、気象予報士レベルの方におすすめ。いずれも(財)気象業務支援センター発行。
価格・在庫情報は気象業務支援センター 季節予報研修テキスト

NOAA/CPC ElNino-Southern Oscillation
http://www.cpc.ncep.noaa.gov/products/precip/CWlink/MJO/enso.shtml

エルニーニョ現象の状況を知る方法として、気象庁から毎月10日頃発表されるエルニーニョ監視速報があるが、月ごとの情報のため現状にあわない場合がある。そこで、なるべく現況に近い情報を得るにはアメリカ海洋大気局の気候予測センター(Climate Prediction Center)のエルニーニョ・南方振動(El Nino and the Southern Oscillation)情報を見ると良いだろう。ここでは一週間ごとの太平洋赤道海域の海水温がアニメーションで表示される。


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