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2003年10月15日更新
【予想される天候】

冬(12 〜2月)の実現の可能性が最も大きい天候は以下のとおりです。

■冬型の気圧配置は長続きしませんが、北日本を中心に寒気の影響を受ける時期があるでしょう。日本海側では平年と同様に曇りや雪または雨の日が多いでしょう。北日本太平洋側では平年と同様に晴れる日が多く、東・西日本太平洋側では平年に比べ曇りや雨または雪の日が多いでしょう。南西諸島では平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。

■この期間の平均気温は、北日本では平年並で、東日本と西日本では平年並か高く、南西諸島で高い見込みです。

■降水量は東・西日本太平洋側で平年並か多い他は平年並でしょう。日本海側の降雪量は北日本では平年並ですが、東日本では平年並か少なく、西日本では少ないでしょう。






平年の晴れ日数と降水日数(1971 〜2000 年平年値)

注:季節予報では「日照率40 %以上の日数」を「晴れ日数」と呼び「晴れの日」の目安として用いています。 日照率は、1 日の日照時間を可照時間(日の出から日の入りまでの時間)で割った値です。また、「日降水量が1mm 以上の日数」を「降水日数」と呼び「雨の日」の目安として用いています。

2003年9月25日 気象庁 気候・海洋気象部発表

【解説】

最近10年の冬(12〜2月)の天候
気温の階級は −:低い 0 :平年並 +:高い *はかなり低い(高い)。

最近の冬(12〜2月)の天候

日本の冬の気温は、1980年代終わりから高温傾向が続いたが、この高温傾向は1990年代初めが高極で、その後北日本では高温傾向が弱まり、最近の2000/01年、2002/03年の2年は寒冬となった。逆に南西諸島では1990年代後半から高温の程度が強まっている。
最近10年の冬(12〜2月)の天候の特徴をみると、低温となった年は北日本で2000/01年、2002/03年の他は1年しかなく、東日本以西では平年並か高い傾向にあるが、北日本では偏った傾向はない。予報区でみると沖縄では低温となった年はない。
また最近10年間の日本海側の冬(12〜2月)の降雪量は、北陸から山陰にかけては少ない傾向が顕著であるが、北海道・東北の日本海側でははっきりした傾向はない。

冬の循環場

[層厚換算温度]
全球平均の850hPaと300hPaの高度差を温度に換算した量(層厚換算温度)は、おおよそ対流圏の平均温度とみなすことができる。対流圏温度の変動はエルニーニョ南方振動(ENSO)との関係が深く、 太平洋赤道域東部の海面水温が上昇すると約半年程度の遅れをもって上昇することが知られている。
全球平均層厚換算温度は2000年春まで続いたラニーニャ現象に伴い2000年に一時負偏差となった後は正偏差を維持しているが、2002/03年冬のエルニーニョ現象の終了に伴い、ゆっくりとした下降傾向がある。
また、北半球中緯度の層厚換算温度偏差も、2000年後半の負偏差以降はほぼ正偏差が持続しているが、エルニーニョ現象が2002/03年冬に終息したことに伴い、下降期に入っていると考えられる。ただし、最近の傾向として海面水温の負偏差よりも対流圏気温の負偏差は小さく、正偏差側に偏っていることに留意する必要がある。全国平均地上気温平年偏差の変動は北半球中緯度の層 厚換算温度偏差と良く連動しているが、1998年をピークとした気温の高い状態から次第に下降期に入っており、昨冬の寒気の南下や今夏のオホーツク海高気圧の影響で一時的に負となった。
全球平均および北半球中緯度層厚換算温度は下降傾向にあるが、正偏差側に偏る傾向も考慮すると、今冬については平年並か平年よりやや高い状態で推移する可能性が高い

[極の寒気の動向]
図2に、日本の冬の気温変動に大きく影響する北半球循環場の卓越パターンと、このパターンの強さを示す指数の時系列を示す。この指数が正の値の場合、北極付近など高緯度側で高度が負偏差、日本付近など中緯度の高度は正偏差となる傾向があり、日本に寒気が入りにくい。これとは逆に指数が負の場合は高緯度で正偏差、日本付近など中緯度で負偏差となりやすく、日本に寒気が入りやすい。このため、この卓越パターンの変動と日本の冬平均気温には正の相関関係があり、指数が正の場合は冬平均気温が高く、負の場合は気温が低い傾向にある。この傾向は北日本ほど明瞭である。
この指数は、1990年代前半は高指数で経過したものの、その後はゼロ付近で小さな変動が続き、2000/01年以降は変動の振幅が大きく、2000/01年、2002/03年が低指数になるなど、現在は長期的な観点からは下降傾向あるいは低極付近にあると考えられる。このため、今冬においても北日本を中心に一時的に強い寒気の影響を受ける可能性がある


熱帯の大気と海洋とエルニーニョ・ラニーニャ発生時における冬の天候の特徴

2002年春に発生したエルニーニョ現象は2002/03年冬に終息した。その後、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は高低を繰り返しているものの、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない。エルニーニョ監視海域の海面水温は、秋は基準値に近い値で推移する可能性が高く、今冬についても基準値より低めながら基準値に近い値で推移すると見られ、エルニーニョ現象またはラニーニャ現象が発生する可能性は小さい。(→海況・エルニーニョ参照)このため、今冬は基本的にエルニーニョやラニーニャ現象時の天候の特徴が現れる可能性は小さい
図3は1971年から2000年までで冬にエルニーニョやラニーニャ現象が発生していた年の冬平均気温である。エルニーニョ現象時の冬平均気温は北日本では傾向はないが、東日本以西では「平年並〜高い」場合が多くなっている。ラニーニャ現象時は全国的にはっきりした傾向はない。


数値予報(アンサンブル予報)による大気の流れの予想

500hPa高度偏差では、北太平洋の日付変更線付近に大きな正偏差があり、日本付近からアジア大陸も広く正偏差に覆われる。一方、北米沿岸は負偏差で、日付変更線より東側ではラニーニャ傾向。図にはないが海面気圧は、大陸東岸は弱い負偏差、日本の東海上は正偏差で、相対的に冬型の気圧配置は弱くなっている。850hPa気温予想では南海上に中心を持つ+1℃の正偏差が東・西日本を覆い、その他の地方も弱い正偏差。


まとめ
[気温] 今予報期間のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値に近い値で経過すると見られ、エルニーニョあるいはラニーニャ現象が発生する可能性は小さいものの、対流圏の平均温度とみなすことができる北半球中緯度層高換算温度は、この冬は平年並か平年よりやや高めに推移する可能性が高く、数値予報資料や各種統計資料は高温傾向を示す資料が多い。
しかし、最近の傾向では北日本には高温傾向がなく、数値予報は極の寒気の動向の予想精度が悪いことも考慮すると、日本の冬の気温変動に大きく影響する冬季北半球高度場第1主成分は長期的に見ると現在は低極にあって、今冬においても北日本を中心に寒気の影響を受ける時期があると考えられる。以上のことから、冬(12〜2月)平均気温は北日本では平年並、東日本、西日本では平年並か高く、南西諸島では高い可能性が大きいと考えられる

[冬合計降水量] 数値予報資料や各種統計資料で東・西日本太平洋側日本海側「多雨」傾向を示すものがあり、高温傾向で冬型の気圧配置が弱く、平年に比べ低気圧の影響を受けやすいと考えられる。資料の揃っている、東・西日本の太平洋側では平年並か多くなる可能性が大きく、その他の地方では、平年並となる可能性が大きいと考える。

[日本海側降雪量] 数値予報資料や各種統計資料は北日本日本海側を除き少雪傾向で揃っている。高温傾向を予想することから、ほぼ資料とおり東日本日本海側では平年並か少なく、西日本日本海側では少なく、北日本は平年並となる可能性が大きいと考える。


north
east
west
nansei
図1:冬(12〜2月)平均気温平年差の経年変化
細線:冬平均気温 太線:5年移動平均



図2:冬の気温変動に大きく影響する北半球循環場の卓越パターン
冬(12 〜2 月)の月平均北半球500hPa 高度場の第1 主成分
下はパターンの強さを示す指数の時系列 太線:5年移動平均




図3:冬にエルニーニョ現象が発現していた年の
冬平均気温(左)、冬降水量(右)の階級頻度

1949〜2000年の統計


資料提供:気象庁
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