2004年10月26日更新
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【予想される天候】
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冬(12〜2月)の実現の可能性が最も大きい天候は以下のとおりです。
■日本海側の地方では平年と同様に曇りや雪または雨の日が多く、太平洋側では平年と同様に晴れる日が多いでしょう。南西諸島では平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。北日本では時々強い寒気が入り、気温の低い時期があるでしょう。東日本の太平洋側や西日本の地方では曇りや雨または雪の時期があるでしょう。
■この期間の平均気温は、北日本では平年並、東日本、西日本では平年並か高く、南西諸島では高いでしょう。
■降水量は北日本日本海側、北日本太平洋側では平年並、東日本太平洋側,西日本日本海側、西日本太平洋側,南西諸島では平年並か多く、東日本日本海側では平年並か少ないでしょう。日本海側の降雪量は北日本では平年並、東日本、西日本では平年並か少ないでしょう。
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平年の晴れ日数と降水日数(1971〜2000年平年値)
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注:季節予報では「日照率40 %以上の日数」を「晴れ日数」と呼び「晴れの日」の目安として用いています。
日照率は、1日の日照時間を可照時間(日の出から日の入りまでの時間)で割った値です。また、「日降水量が1mm以上の日数」を「降水日数」と呼び「雨の日」の目安として用いています。
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2004年9月22日 気象庁 気候・海洋気象部発表
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【解説】
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最近10年の冬(12〜2月)の天候
気温の階級は −:低い 0 :平年並 +:高い *はかなり低い(高い)。
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最近の冬(12〜2月)の天候
日本の冬の気温は、1980年代終わりから高温傾向が続いたが、1990年代初めを境に幾分高温傾向は弱まり、南西諸島をのぞき、冬平均気温が1℃を超えるような高温は現れていない。しかしながら、低温となったのは北日本で2年、その他の地方では1年で、東日本以西では依然、平年並か高い傾向にある。北日本には偏った傾向はない。
最近10年間の日本海側の冬(12〜2月)の降雪量は、北陸から山陰にかけては少ない傾向が顕著だが、北海道・東北の日本海側でははっきりした傾向はない。
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冬の循環場
[層厚換算温度]
全球平均の850hPaと300hPaの高度差を温度に換算した量(層厚換算温度)は、おおよそ対流圏の平均温度とみなすことができる。層厚換算温度と日本の気温には正の相関関係がある。
北半球の層厚換算温度偏差は2000年後半の負偏差以降はほぼ正偏差が持続しているが、2004年6月、7月と負偏差になった。8月には0℃に戻り、今後は平年並か平年よりやや高い状態で推移する可能性が高い。
[極の寒気の動向]
図2に、日本の冬の気温変動に大きく影響する北半球循環場の卓越パターンと、このパターンの強さを示す指数の時系列を示す。この指数が正の値の場合、北極付近など高緯度側で高度が負偏差、日本付近など中緯度の高度は正偏差となる傾向があり、日本に寒気が入りにくい。これとは逆に指数が負の場合は高緯度で正偏差、日本付近など中緯度で負偏差となりやすく、日本に寒気が入りやすい。このため、この卓越パターンの変動と日本の冬平均気温には正の相関関係があり、指数が正の場合は冬平均気温が高く、負の場合は気温が低い傾向にある。この傾向は北日本ほど明瞭である。
この指数は、1990年代前半を中心に正偏差が続き、日本では暖冬が連続したが、90年代後半以降はやや負偏差の傾向が続いた。指標が大きな負の値となる年には北日本を中心に寒冬となりやすかった。この90年代後半からの傾向から、今冬も指数が負となり北日本を中心に寒気南下の可能性があると見られる。
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海況
図3は太平洋の海面水温の平年からの差を示したものである。太平洋赤道域の海面水温は中部で平年より高く、西部の負偏差が明瞭になっている。このため、中部で対流活動が活発となり、西風偏差が持続しやすい状況にある。中部での対流活動の活発化を契機に、エルニーニョ現象の発生に至ることも考えられるが、監視海域の海面水温は秋から冬にかけて基準値よりやや高い値で推移
する可能性が大きい。海面水温偏差の分布からは、平年に比べ、西部太平洋域赤道域での対流活動が弱く、中部太平洋赤道域での対流活動が活発と見込まれる。このような場合には、日本の冬平均気温は高くなることが多い。ただし、北日本では、寒気流入の影響があり、高温となるとは限らない。(→海況・エルニーニョ参照)
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数値予報(アンサンブル予報)による大気の流れの予想
500hPa高度偏差では、日本列島付近は東西に広く正偏差だが、カムチャツカ半島からアリューシャン列島付近にかけ負偏差域があり、北日本を中心に寒気の影響がある見込み。850hPa気温は、四国沖を中心として日本列島は正偏差だが、北日本の太平洋沿岸から東では負偏差となっている。海面気圧は、大陸の高気圧は50゜N以北では負偏差、50゜N以南では正偏差で、高圧部の中心は例年より南東と予想されている。また、アリューシャン列島付近は負偏差で、低気圧が発達することを示すが、日本付近の等圧線の間隔は平年とあまり変わらない。
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まとめ
[気温]
□冬に卓越する北半球循環場パターンの長期傾向からは、寒気の南下に注意する必要がある。
□その他の日本の天候と関係の大きな循環場の指数は、気温が並かやや高めを示唆する。
□対流圏層厚換算温度も、並か平年を上回る程度で推移すると思われる。
□海況からは、エルニーニョ現象になるかどうかともかく、西部で負偏差、中部(〜東部)で正偏差で、このパターンから、日
本の冬平均気温は並〜高温となる可能性が大きい。
□統計資料(CCA)も海面水温分布の特徴を反映し、並〜高温。
以上から、強い寒気の南下があるものの、中心は北日本で、また、断続的に寒気が続くことはないと考えられ、冬(12〜2月)平均気温は北日本では平年並、東日本、西日本では平年並か高く、南西諸島では高い可能性が大きいと考える。
[冬合計降水量] 海面水温分布が特徴的であることから、統計予測資料(CCA)もこのことを反映し、東日本日本海側、南西諸島をのぞき並〜多雨傾向。冬平均気温と冬期間降水量との関係も考慮し、北日本日本海側、北日本太平洋側で平年並、東日本日本海側で平年並か少なく、その他の地方では平年並か多い可能性が大きい。
[日本海側降雪量]
統計予測資料(CCA)は海面水温分布を反映し、東日本以西で少ない傾向。気温との関係も考慮し、北日本日本海側では平年並、東日本日本海側、西日本日本海側では平年並か少ない可能性が大きいと考える。
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図1:冬(12〜2月)平均気温平年差の経年変化
細線:冬平均気温 太線:5年移動平均
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図2:冬の気温変動に大きく影響する北半球循環場の卓越パターン
冬(12 〜2 月)の月平均北半球500hPa 高度場の第1 主成分
下はパターンの強さを示す指数の時系列 太線:5年移動平均
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図3:冬にエルニーニョ現象が発現していた年の
冬平均気温(左)、冬降水量(右)の階級頻度
1949〜2000年の統計
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資料提供:気象庁 |