2017年1月23日更新
【2016年のさくらの開花・満開日】
 前年の11月から1月半ばにかけて気温が高い状態が続き、記録的な暖冬となりました。暖冬は桜の花芽が休眠から目覚めにくく、開花が遅くなる要因となります。
 一方で、1月末以降も気温が高い日が多く、3月もかなりの高温となった期間がありました。このため、暖冬による影響を考慮しても平年よりも早く開花したところが多くなっています。
 ただ、暖冬による開花の遅れは、平年の気温が高い地域ほど大きくなるため、九州南部など西日本の太平洋沿岸を中心に、開花がやや遅くなる所もありました。
 北日本は暖冬の影響が小さく、2月から4月も高温傾向が続いたため、平年よりかなり早い開花となった所が多くなりました。
→前年の開花・満開日は 「さくら2015」


さくらの開花・満開日の観測はソメイヨシノを観測対象とし、各気象台が定めた標本木で行っている。 ソメイヨシノが分布していない北海道地方では一部を除きエゾヤマザクラを対象としている。 「開花」とは花が数輪以上開いた状態のことで、「満開」とは約80%の花が開花した状態のことである。


北海道
官署開花日平年差満開日平年差
札幌4/25-85/01-6
稚内*5/13-15/15-2
旭川*5/03-25/04-3
網走*5/08-35/10-4
釧路*5/10-75/13-7
帯広*4/30-45/03-4
室蘭4/25-115/02-9
函館4/24-64/26-8
東北
官署開花日平年差満開日平年差
青森4/17-74/21-8
秋田4/14-44/19-3
盛岡4/11-104/18-7
仙台4/01-104/06-10
山形4/06-94/10-9
福島3/30-104/03-10
関東・甲信
官署開花日平年差満開日平年差
水戸3/28-54/06-2
宇都宮3/28-44/04-4
前橋3/23-84/01-5
熊谷3/23-64/01-4
東京3/21-53/31-3
銚子4/0114/06-2
長野4/03-104/08-9
横浜3/23-34/02-1
甲府3/23-44/030
北陸・東海
官署開花日平年差満開日平年差
静岡3/2724/052
名古屋3/19-73/31-3
岐阜3/20-63/31-4
3/28-24/02-3
新潟4/03-64/07-7
富山3/29-74/01-9
金沢3/30-54/04-6
福井3/27-73/31-9
近畿
官署開花日平年差満開日平年差
彦根3/30-34/05-4
京都3/23-54/02-3
大阪3/23-54/01-4
神戸3/26-24/03-2
奈良3/23-64/02-3
和歌山3/22-43/31-4
中国・四国
官署開花日平年差満開日平年差
岡山3/26-34/01-5
広島3/23-44/02-2
松江3/23-83/30-9
鳥取3/23-83/31-7
高松3/26-24/04-1
松山3/23-24/03-1
徳島3/3024/083
高知3/2424/023
下関3/2814/03-2
九州・沖縄
官署開花日平年差満開日平年差
福岡3/19-43/30-2
大分3/2844/085
長崎3/22-23/30-4
佐賀3/23-13/31-3
熊本3/22-14/021
宮崎3/2404/053
鹿児島3/2714/062
名瀬+1/18-12/023
那覇+1/2132/128
南大東島+2/09203/0128
宮古島+2/04192/2516
石垣島+2/12273/0226
2016年のサクラの開花・満開日
・官署名に付した「*」はエゾヤマザクラ、「+」はヒカンザクラ、印のないものはソメイヨシノを観測対象としている。
・平年差に付した「-」は平年より早い、「+」は平年より遅いことを示す。
さくらの開花・満開日の平年差階級区分
さくらの開花を平年値(1981年〜2010年の30年間の累年平均値)と比べる場合、「平年並」は平年値との差が2日以内、「早い」とは平年値より3日以上早く、「かなり早い」は7日以上早いことを示す。
階級平年との比較
かなり早い7日以上早い
早い平年値より3日以上早い
平年並み平年値との差が2日以内
遅い平年値より3日以上遅い
かなり遅い7日以上遅い

さくらは夏頃に翌春咲く花の元となる花芽を形成し、秋に休眠(成長が止まる)に入る。休眠に入った花芽は、冬の低温に一定期間さらされると休眠から目覚め(休眠打破)、気温の上昇と共に成長を始め開花する。
休眠打破が不十分な場合は、開花が遅れたり不揃いになったりすることがある。


【さくら2016】 〜 記録的な暖冬はさくらの開花にも影響 〜

片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)  資料提供:気象庁

◆開花

3月19日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、福岡と名古屋でさくらが開花した。名古屋は平年より7日早く、福岡は4日早い。

冬から春にかけて全国的に気温が記録的に高くなった影響で、各地とも平年より5日から10日程度早くなった。東京は3月21日、平年より5日早く開花した。
そして、4月24日は函館で、25日には札幌で開花し、北海道では大型連休の前半に花見シーズンを迎えた。さくら前線は55日をかけて日本列島を北上し、5月13日に稚内に到達した。

2016年【冬】 平均気温
平均気温平年差(℃) 高い方から
1946年以降
北日本 1.0 高い8位
東日本 1.4 かなり高い 2位
西日本 1.0 かなり高い 3位
 
2016年【春】 平均気温
平均気温平年差(℃) 高い方から
1946年以降
北日本 1.5 かなり高い 2位
東日本 1.6 かなり高い 2位
西日本 1.3 かなり高い 2位
表1:2016年冬(12月-2月)と春(3月〜5月)の平均気温を平年と比べたもの。


◆満開

3月30日、全国(沖縄・奄美を除く)で最も早く福岡、長崎、松江で満開となった。松江は平年よりも9日早い。開花以降も全国的に気温の高い状態が続いたため、各地で平年より3日から1週間程度早くなった。東京では3月31日に、平年より3日早く満開を迎え、入学式は見頃となった所が多い。
また、2016年春は全国的に高気圧に覆われる日が多く、日照時間は各地で平年を上回った。好天に恵まれた影響で、福島や仙台では平年より10日早く満開となった。
旭川では5月3日に開花、翌日に満開となるなど、北国の春は2016年も早足だった。


◆冬が暖かいとさくらが寝不足になる

さくらは一般に、秋までに花芽を形成し、休眠に入りる。一定期間、冬の寒さにさらされると眠りから目覚め、気温の上昇とともに花芽が成長し、春に開花する。
しかし、冬の寒さが不十分になると、休眠打破が遅れ、かえって開花が遅れる原因になる。「冬が暖かいとさくらが寝不足になる」ともいえる。
この影響は南ほど顕著で、暖冬の年は九州や四国でさくらの開花が遅くなる傾向がある。

表2は鹿児島を例に調べたもの。
鹿児島のさくら開花平年日は3月26日だが、12月が暖かい年は平均すると3月29日になり、さくらの開花が平年よりも遅くなっている。
鹿児島の冬は東京よりも3度以上も高く、冬の高温がさくらに影響しやすい。
同じようなことは関東地方にも言える。冬でも温暖な南房総や神奈川県の沿岸部では暖冬の年、さくらの開花が東京よりも遅くなることがある。

 

表2:12月の高温と鹿児島のさくら開花日の関係(1990年以降)
西日本 鹿児島
12月の地域平均気温平年差(℃) 階級 さくらの開花日(翌年)
2015 1.7 かなり高い 3月27日
2007 1.1 高い 3月28日
2006 0.7 高い 3月30日
2004 1.6 かなり高い 4月3日
2000 0.5 高い 3月30日
1998 1.5 かなり高い 3月26日
1997 0.8 高い 3月28日
1994 1.1 高い 3月31日
1992 0.9 高い 3月31日
1991 1.3 かなり高い 3月26日

◆大分・徳島で珍事 さくらが見頃にならない!?

全国的に開花が早かった一方で、九州や四国では開花が平年より遅くなった所もあった。大分では平年より4日遅く、徳島、高知、静岡では平年より2日遅くなった。
2016年冬は大規模なエルニーニョ現象の影響で、西日本や東日本で冬の平均気温が平年を大幅に上回る記録的な暖冬となった。そのため、九州や四国では寒さが足りず休眠打破の時期が遅れ、花芽の成長に影響があったようだ。


大分では4月8日に平年より5日遅く満開が発表されたが、すでに一部の花が散り始めていた。散った花を含めて全体の約8割が開花したと判断し、異例の満開発表となった。また、徳島でも満開の発表があったときにはすでに花が散り始めていて、例年のような見頃の時期はなかった。