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2006年9月26日更新
【2006年の夏(6〜8月)のまとめ】
渡邊正太郎(ウェザーマップ・気象予報士)
2006年夏のキーワードは「寒気」
昨年の暮れから続いている、寒気が流れ込みやすい状況。この夏の天候にも、大きな影響を与えました。

影響1  6〜7月の低温・日照不足
 寒気の流れ込みやオホーツク海高気圧の影響で、全国的に日照不足となりました。特に、関東や東北で日照時間が少なく、7月の日照時間が平年の40%にも満たない地点もありました。この結果、気温の低い2か月となっています。
 また雨の日が多いというよりも、曇の日が多いのが特徴で、東京では「くもり(日照率40%未満・降水量1ミリ未満)」の日が6・7月で32日にものぼり、過去45年で最多。逆に「晴れ(日照率40%以上・降水量1ミリ未満)」の日も2ヶ月で7日しかなく、これも過去45年で最少となっています。

 一方、西日本や北海道では関東や東北に比べると晴れた日も多く、しかも晴れた日は気温がかなりあがりました。気温の変動が大きかったことも大きな特徴です。

影響2  平成18年7月豪雨 7/15〜24
 今年の梅雨は梅雨前線の活動が活発で、西日本や南西諸島を中心に降水量が多くなりましたが、 特に7月の中旬は、梅雨前線が長い時間日本列島付近に停滞し、 鹿児島・長野を中心に、九州〜関東の広い範囲で大雨となりました。
 各地で土砂災害や浸水害が発生し死者が23名にも上ったため、 気象庁は「平成18年7月豪雨」と命名しています。
 この前線の停滞にも、寒気が一役買っています。 北からは寒気、南からは太平洋高気圧があって、前線がどちらへも動けない状態に。 しかも、それがちょうど日本列島の上だったために、 列島を縦断するように前線が居座り、広い範囲で長時間の大雨となりました。
natsu2006-2.gif

影響3  梅雨明けの遅れ
 梅雨入りはほぼ平年並みでしたが、梅雨明けが10日ほど遅くなり、長梅雨となりました。 特に、九州南部は梅雨が2ヶ月にも及び、梅雨明けが特定出来なかった93年 を除いて、過去30年間で最長タイの記録となっています。
 寒気が流れ込むということは偏西風が蛇行するということで、 こうなると梅雨前線がなかなか北上しません。 今回の梅雨明けは、梅雨前線が消滅するというめずらしい形で、 梅雨明け後も数日間は、夏らしくない日が続きました。

影響4  短時間強雨の多発
 この夏は短時間強雨の発生が多く、1時間80ミリ以上の猛烈な雨の発生回数は、 九州を中心に19回にものぼり、過去30年で最多となりました。
 上空に寒気が流れ込むと、大気が不安定になり積乱雲が発達しやすくなります。 梅雨期間中はもちろん、梅雨が明けてからも周期的に寒気が入り、 局所的な大雨が相次いぐ結果となりました。




 これらの天候はビジネスにも影響を・・・
 レジャー関連などの屋外型消費低調
 7月の消費支出を見ると、「遊園地入場・乗り物代」が前年比44.0%のマイナス。 ビアガーデンの人出も低調で、「ビール」も12.6%のマイナスとなりました。 逆にテレビゲームが同63.9%のプラスになるなど、屋内型の消費が好調でした。

 野菜高騰
 春先からの日照不足で、じりじりと野菜の値段が上がっていた中、 7月の大雨が追い打ちをかけて一気に高騰しました。 平成18年7月豪雨後には、前週に比べてレタスが9割、キュウリが7割も高騰。 野菜は、雨や日照不足で傷や病気が発生するため、8月に入ってもなかなか回復しませんでした。

 クールビズ2年目不発?
 6月はもちろん7月に入っても、冷房が必要ないような日がかなりありました。 そのため、昨年から始まったクールビズもトーンダウン。 Yシャツの購入が2桁台の減少になるなど、消費にも大きな影響が出ました。 8月は平年よりも気温が高くなったため、盛り返してきたようです。





【2006年の夏(6〜8月)の特徴】
気象庁報道発表資料より

今年の梅雨入りは、ほぼ平年並であった。梅雨前線の活動は活発で、曇りや雨の日が多く、6月前半には南西諸島、6月後半から7月にかけては東日本から西日本にかけての広い範囲で大雨となった。梅雨明けは、南西諸島で平年より早く、九州地方から東北地方にかけては平年より遅かった。このため、南西諸島をのぞき日照時間の少ない状況は7月まで続き、8月に入り、太平洋高気圧におおわれて、晴れる日が続くようになり、日照時間も平年を上回るようになった。

6、7月と日照時間が少なかったことから、3か月日照時間は、ほぼ全国的に少なかった。8月に入っても、時々東よりの湿った気流の影響を受け曇ることが多かった関東甲信地方や北日本太平洋側ではかなり少なくなったところもあった。

夏平均気温は全国的に高温となった。6月前半や7月後半には、寒気の南下や、オホーツク海高気圧の影響などでほぼ全国的に低温となり、8月には西日本を中心に太平洋高気圧におおわれ、晴れて高温となるなど気温の変動が大きかった

台風の発生は11個(第2号から第12号、平年11.3個)、南西諸島では5個(第3、4、5、8、9号、平年4.5個)の台風が、本土では2個(第7、10号、平年3.1個)の台風が接近し、そのうち台風第10号は、宮崎県に上陸した後、九州地方をゆっくりと縦断したことから、九州地方や四国地方の一部で大雨となった。


平均気温

全国的に高く、九州地方ではかなり高かった。北海道と西日本では平年を1℃以上上回ったところがあった。日最高気温35℃以上の日数、同30℃以上の日数、日最低気温25℃以上の日数は、ともに平年を上回ったところが多かった。


降水量

夏の降水量は、北日本太平洋側、東日本、および南西諸島では平年並だったが、西日本では多く、九州地方では平年の140%以上のところがあった。一方、北日本の日本海側では少なかった。なお、この夏期間中には、各地で記録的な大雨や短時間強雨が多く発生した。


日照時間

東日本日本海側と西日本日本海側では平年並だったが、そのほかは全国的に少なかった。特に、東北地方の太平洋側から関東地方にかけては平年の80%未満のところが多く、東京、千葉など関東地方の一部では平年の70%未満となった。



記録を更新した地点は、ありません。



黄色:平年より高い(多い) 青:平年より低い(少ない)



平均気温の平年差の経過(5日移動平均)



【大気の流れの特徴】 500hPa天気図
極付近で低圧部・負偏差と極うずが発達、中・低緯度では正偏差が広がり、気温の高かったことを示している。
日本付近も広く正偏差におおわれ、また、日本の南、亜熱帯高気圧は、6月後半から強かったことから、正偏差となった。
沿海州付近の尾根は、6月前半や、7月後半の日本付近への寒気やオホーツク海高気圧に対応するものだが、長く続かなかったことから、3か月平均天気図では顕著な尾根にはなってない。




2005年夏の天候こちら
2004年夏の天候こちら
2003年夏の天候こちら
2002年夏の天候こちら
それ以前の年についてはデータベース:天候の特徴


2006年6〜8月の500hPa高度と偏差
等値線間隔は高度(実線):60m 偏差(破線):30m
赤:正偏差域 青:負偏差域
資料提供:気象庁

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