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2007年1月19日更新
【2006年のまとめ】
片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
2005年12月から2006年1月上旬にかけて日本列島にはたびたび強い寒気が流れ込み、日本海側で記録的な大雪に見舞われた。積雪の記録は1月に54地点、2月に18地点で最大記録を更新するなど近年になかった豪雪となった。そのため、市民生活に深刻な影響があり、雪下ろしや除雪作業中に亡くなる人が152人に上った。
気象庁では社会的に大きな影響を与えた大雪被害を受けて、「平成18年豪雪」と命名した。大雪による命名は昭和38年1月豪雪以来43年ぶりのこと。

春は低気圧や前線の影響を受ける日が多く、全国的に日照不足となった。例年と比べて五月晴れの日がほとんどなく、葉物野菜が値上がりするなどの影響があった。

ぐずついた天気が解消されないまま梅雨入りし、6月には沖縄本島で記録的な大雨があった。梅雨前線の活動は後半になって非常に活発になり、九州や北陸、長野県で相次いで集中豪雨が発生したため気象庁は7月15日〜24日の大雨を「平成18年7月豪雨」と命名した。梅雨明けは南西諸島で平年より早かったほかは平年より遅かった。

秋は寒気の影響が弱く、10月をピークに全国的に気温が高くなった。秋雨前線の活動は弱く、西日本では記録的な少雨となった。一方で、日本列島には南から暖かい空気が流れ込みやすく、低気圧が猛烈に発達することが多かった。11月7日には北海道の佐呂間町で竜巻が発生し、トンネル工事事務所にいた作業員9人が死亡した。竜巻の強さは藤田スケールでF3と推定され、日本の竜巻史上最大級の被害となった。
また、秋にはペルー沖の海水温が高くなるエルニーニョ現象が4年ぶりに発生し、世界的に高温となった。

2006年の平均気温(平年差)
北日本 東日本 西日本 南西諸島
+0.4℃ +0.4℃ +0.6℃ +0.6℃
年平均気温は全国的に高かった。南西諸島ではかなり高く、そのほかの各地も平年を0.5℃上回ることが多かった。

2006年の降水量(平年比)
北日本 東日本 西日本 南西諸島
108% 110% 111% 100%
年降水量は北日本、東日本の太平洋側、西日本で多く、平年の 120%を超えたところもあった。一方、北日本の日本海側や九州南部では平年を下回った所があった。

2006年の日照時間(平年比)
北日本 東日本 西日本 南西諸島
93% 91% 96% 95%
年間日照時間は全国的に少なかった。北日本の太平洋側と関東ではかなり少なく、東京では年間日照時間の少ない方第2位となった。
参考資料:気象庁発表「2006年(平成18年)の天候


【2006年のトピックス】
平成18年豪雪
大雪で幕を開けた2006年。来る日も来る日も絶え間なく降る雪は住民を疲弊させ、自治体の除雪費はあっという間に底をついた。長野県や新潟県では除雪のため、自衛隊の派遣を要請、長野県内の大雪による自衛隊派遣は1981年1月以来25年ぶり。また、新潟県では1986年以来20年ぶりに豪雪による災害救助法適用となるなど、近年大雪に見舞われることがなかっただけに市民生活への影響は深刻となった。

全国で最深積雪の年間記録を更新した地点(タイ記録を含む)は27地点に上った。
北海道恵庭島松 115cm*、余市 196cm
秋田県能代 92cm*、鷹巣 129cm、五城目 137cm
岩手県岩手松尾 62cm、雫石 113cm、遠野 49cm*、北上 58cm
山形県狩川 162cm、向町 205cm
群馬県藤原 301cm、みなかみ 275cm
長野県信濃町 159cm
岐阜県神岡 166cm、白川 297cm、長滝 219cm、樽見 171cm
新潟県湯沢 358cm、津南 416cm
富山県氷見 99cm
福井県武生 92cm
岡山県千屋 97cm
広島県高野 166cm、八幡 182cm、大朝 89cm*
島根県赤名 134cm
*:タイ記録
豪雪による死者は152人、負傷者は2145人で、65歳以上の高齢者が犠牲になった例が多くあった。また、住宅の全壊18棟、半壊が28棟など1980年−81年の56豪雪以来の被害となった。(消防庁まとめ)

春から夏にかけての日照不足
春から夏にかけては全国的に日照不足が顕著となった。例年、春は低気圧が周期的に日本列島を通過するが、2006年は低気圧に加えて寒冷渦が頻繁に日本列島を通過したため、4月下旬から不安定な天気が目立って多くなった。5月は五月晴れに見放され、走り梅雨のような天気となった。東京では5月、6月、7月すべての日照時間は平年を下回り、年間日照時間は1587.8時間と1998年(1535.4時間)に次ぐ観測史上2番目に少ない記録となった。


平成18年7月豪雨
今年の梅雨入りは西日本で平年より2日〜4日遅れたが、梅雨は予想外に長引いた。例年なら梅雨明けする7月21日には第5回目の日照不足に関する情報が発表されるなど、梅雨前線は7月半ばを過ぎても活発な状態が続き、梅雨明けが見えない状況となった。
7月18日夕方からは長野県で激しい雨が降り出し、19日4時30分頃に岡谷市で土石流が相次いで発生した。
総雨量は長野県中部で400ミリ〜600ミリに達し、土石流が発生した岡谷市周辺では18日の日雨量が観測史上最高となった。

総雨量(7月15日〜24日)
長野県塩尻市木曽平沢 533ミリ
長野県辰野町辰野494ミリ
長野県王滝村御嶽山817ミリ
7月18日の雨量
長野県塩尻市木曽平沢175ミリ
長野県辰野町辰野147ミリ
長野県伊那市伊那173ミリ

長野県岡谷市で土石流被害をもたらした大雨は7月22日、九州に移った。
梅雨前線は九州を横切るように停滞、南から非常に湿った空気が流れ込んだことに加えて、上空には寒気が入り、発達した積乱雲が次々と鹿児島県や宮崎県に猛烈な雨を降らせた。総雨量は宮崎県と鹿児島県で1000ミリを超える記録的な豪雨となった。鹿児島県や宮崎県、熊本県では河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、10万人以上に避難指示・勧告がだされた。
総雨量(7月15日〜24日)
宮崎県えびの市えびの1281ミリ
鹿児島県さつま町紫尾山1264ミリ
7月22日の雨量
宮崎県えびの市えびの519ミリ
宮崎県えびの市加久藤405ミリ*
鹿児島県阿久根市509ミリ*
*:7月の極値更新

過去最大級の竜巻被害
全国的に高温となった今年の秋は、竜巻の被害が相次いだ。
9月17日、台風13号が長崎県佐世保市に上陸。九州を中心に大荒れの天気となり、宮崎県延岡市では暴風に伴って竜巻が発生した。竜巻の強さはF2と判断され、特急にちりん9号の横転やスーパーの陳列棚が倒壊して男性が下敷きになるなど延岡市内では竜巻の大きな爪跡が残った。

台風による竜巻はそれほど珍しいものでないが、11月7日には竜巻空白域といわれていた北海道オホーツク海側で大規模な竜巻が発生したのだ。
2006年11月7日13時20分〜30分ごろ、北海道佐呂間町若佐地区で竜巻が発生した。トンネル工事用プレハブ事務所が突風で倒壊し、2階で会議をしていた作業員9人が死亡するなど竜巻被害としては過去例がない大惨事となった。
被害地域は幅200m長さ1kmの細長い帯状で、被害を受けた建物は103棟、うち47棟は全壊した。また、竜巻が巻き上げたと思われるプレハブ事務所の床板や石こうボードの破片が現場から約15km離れたサロマ湖畔で見つかるなど、竜巻の強さは藤田スケールでF3と推測された。これは1990年12月に千葉県茂原市で発生した竜巻に匹敵する大規模な竜巻である。


11月7日13時30分の気象レーダー(資料提供:気象庁、地名部分は加工)

11月7日9時の天気図

11月7日13時の赤外画像

発生翌日の現地状況→「2006年11月7日 北海道佐呂間町 竜巻被害」ウェザーマップHP
台風の発生数が少ない
2006年の台風1号は5月9日に発生、その後も発生数が少なく、発生数は2005年に続いて23個(平年26.7個)となった。これには秋から発生したエルニーニョ現象が関係している可能性があり、2006年は台風の上陸が10号、13号だけに留まるなど、台風シーズンがやや短かった感じがする。
一方でフィリピンの東から西進する台風が多く、台風が6個上陸したフィリピンでは甚大な被害が発生した。


2006年の台風の発生数・日本本土への接近数・上陸数

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
発生



1 1 3 7 3 4 2 2 23
接近





3 4 2 1

10
上陸






1 1


2

2006年の上陸台風
台風10号は8月13日、台風7号と同じく父島周辺(北緯25度40分東経138度25分)で発生。本州付近で高気圧が強かったことから、北上のスピードはかなりゆっくりで、18日宮崎に上陸してからも熊本市付近で半日近く停滞していた。上陸してから日本海に抜けるまで約28時間かかった。
台風が上陸しても速度が上がらなかったため、九州南部では局地的な大雨となり、宮崎県見立で569ミリ、えびので515ミリに達した。

台風13号は9月15日、非常に強い勢力で東シナ海を北上した。
先島諸島では暴風により電柱93本が倒れ、一時1万8900世帯が停電する被害があった。16日には佐賀県伊万里市で鉄砲水が発生し、通りかかった車ごと川に押し流した。
そして、17日18時過ぎ、強い勢力のまま長崎県佐世保市に上陸した台風13号は短時間で日本海に向けたが、台風の東側には非常に発達した雲があったため、九州・四国・紀伊半島では局地的に大雨となった。この時、宮崎県延岡市では竜巻が発生し、特急が横転するなど大きな被害があった。
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参考資料:気象庁発表「2006年(平成18年)の台風について
   2006年夏の天候 ( 2006年9月26日更新 )
   2006年の梅雨 ( 2006年9月20日更新 )
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   2005年/2006年冬の天候 ( 2006年3月6日更新 )
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