| ■猛烈に発達した低気圧 | 
| 2006年11月7日は発達した低気圧により北海道佐呂間町で竜巻が発生したが、低気圧が日本付近で発達する傾向は冬になっても続いた。 2006年12月26日、低気圧が発達しながら関東付近を通過した。南からは暖かく湿った空気が流れ込んだため雨雲が発達し、東京は午後から雷を伴った強い雨が断続的に降った。東京の総雨量は177ミリに達し、12月としては観測史上1位の大雨となった。例年ならばクリスマス寒波、年末寒波など強い寒気によって大雪になる時期だが、これほどまでの大雨になるとは誰が予想しただろう?
 
 
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| 東京の記録 ■最大24時間降水量:177.0mm(27日4:50まで)
 12月として最多記録
 ■日雨量:154.5mm(26日)
 12月として最多記録
 ■最大1時間降水量:18.0mm(26日22:30まで)
 12月下旬としては1962年以来44年ぶりの強雨
 
 |  2006年12月26日の天気図
 |  2006年12月26日の気象衛星画像
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| 年が明けても冬型の気圧配置は定まらず、1月6日から7日にかけては低気圧が猛烈に発達し、各地に強風被害をもたらした。
 6日(小寒)、紀伊半島沖にあった低気圧が発達しながら関東を通って北日本に進んだ。この低気圧は7日9時には964hPaまで発達し、中心気圧が一日で48hPaも低下するなど過去例のない発達の仕方をした。これほどまでに急発達する低気圧は非常に珍しく、低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込んだことが主な原因と思われる。また、急激に発達したことから「爆弾低気圧」という言葉が飛び交い、“爆弾”という言い方が適切なのかといった議論を呼んだ。
 地上天気図を見ると等圧線がまるで年輪のように渦を巻き、全国的に猛烈な風が吹いた。八丈島では1月としては最も強い最大瞬間風速48.5メートルの突風を観測、東京でも1月としては初めて30メートルを超える風が吹いた。
 
 
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	| 各地の最大瞬間風速 |  
		| 八丈島 | 西南西の風 | 48.5m/s | 1月として1位 |  
		| 浦河 | 北東の風 | 48.0m/s | 年間2位 |  
		| 三宅島 | 西の風 | 43.1m/s | 
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		| 函館 | 北西の風 | 40.1m/s | 1月として1位 |  
		| 東京 | 西の風 | 30.1m/s | 1月として1位 |  | 強風の被害 ■新潟県湯沢町のガーラ湯沢スキー場で強風のためゴンドラが停止し、スキー客ら約2700人が下山できなくなった。全員が無事に下山できたのは深夜になってから、JR東日本では帰宅できなくなった人に対してホームに新幹線停車させ仮眠所として提供した。
 ■千葉県館山市沖で貨物船と土砂運搬用の台船が座礁した。
 ■北海道南富良野町では湿った雪の影響で電線が垂れ下がり、町内全域約1300戸で停電となった。
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|  2007年1月7日の天気図
 |  2007年1月7日の気象衛星画像
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| 一年で最も積雪が多い2月。しかし、今年は各地の雪祭りが中止や縮小に追い込まれるほど雪が少なかった。さっぽろ雪まつりだけは遠方から雪をかき集めなんとか開催にこぎ着けたが、期間中に雨が降るなど暖冬の影響は大きかった。 さらに、東京では初雪の最晩記録(1960年2月10日)を過ぎても雪が降らず、とうとう観測史上初めて初雪のない冬となってしまった(3月16日に初雪を観測したが、気象庁定義の「冬」には3月は含まれない)。
 
 雪を見ないまま2月14日には九州から関東、北陸までの地方で春一番を観測、東京では気温が17.3℃まで上がった。春一番は「春の嵐」というように各地で強風や雪崩の被害が相次いだ。
 青森県八甲田山では午前11時すぎ、雪崩が発生し、山スキー客ら24人が巻き込まれた。現場では当時、猛吹雪で、積雪は酸ヶ湯(アメダス)で329センチ、低気圧の接近で南東風が強まり、気温は‐2.7℃まで上がっていた。この冬は北日本でも気温の高い日が多かったため雪の層に隙間があった可能性があり、強風や気温の上昇で亀裂が広がったことが考えられる。
 
 
 
|  2007年2月14日の天気図
 |  2007年2月14日の気象衛星画像
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	   | 【2006/2007年の冬(12〜2月)の特徴】 |  | 気象庁報道発表資料 |  
        | 12月上旬の北日本や1月末から2月初めに南西諸島で低温となったほかは、全般に寒気の影響を受けにくく、冬型の気圧配置は長続きしなかった。このため全国的に気温が高く経過した。東日本と西日本の地域平均気温は、地域平均の統計のある1946/47年の冬以降で最も高かった。また、北日本、東日本、西日本日本海側の降雪量は、地域平均の統計のある1961/62年の冬以降で最も少なかった。
 
 本州の日本海側では平年に比べ晴れの日が多かったため、日照時間が多く、東日本日本海側では日照時間が1946/47年の冬以降で最も多かった。また、北陸から山陰にかけては降水量が少なかった。
 
 12月下旬と1月上旬に、東日本から北日本の太平洋沿岸を、低気圧が急激に発達しながら北上したため、大雨や暴風により大きな被害が発生した。これらの低気圧の影響で北・東日本の太平洋側で多雨となった。
 
 
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        | 平均気温 |  
        | 冬の平均気温は、全国的にかなり高かった。平年を1.5℃前後上回ったところが多く、秋田、仙台(宮城県)、東京、名古屋(愛知県)、大阪、高松(香川県)、福岡など全国の63地点(153地点中)で冬の平均気温の最高値を更新した。 |  |  
 
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        | 降水量 |  
        | 冬の降水量は、東日本日本海側でかなり少なく、西日本日本海側で少なかった。留萌(北海道)、福井では冬の降水量の最小値を更新した。一方、北日本太平洋側ではかなり多く、東日本太平洋側では多かった。北日本日本海側と西日本太平洋側、および南西諸島では平年並だった。 |  |  
 
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        | 日照時間 |  
        | 冬の日照時間は、北日本から西日本にかけての日本海側と南西諸島では多く、東日本日本海側ではかなり多かった。酒田(山形県)、伏木(富山県)、金沢(石川県)では、冬の日照時間の最大値を更新した。一方、北日本から西日本にかけての太平洋側では平年並だった。 |  |  
 
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        | 積雪・降雪 |  
        | 降雪の深さ(冬の合計)、冬の最深積雪ともに全国的にかなり少なかった。倶知安(北海道)、青森、秋田、新潟、富山など20地点では降雪の深さ(冬の合計)の最小値を更新した。また、江差(北海道)、むつ(青森県)、秋田、新潟、金沢など19地点では冬の最深積雪の最小値を更新した。 |  |  
 
 
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        | 記録を更新した地点 |  |  | 
        | 降水量の少ない記録 |  | 
 | 降水量 | 平年値 |  | 留萌 | 203.5mm | 308.6mm |  | 福井 | 487.0mm | 741.3mm |  | 
        | 日照時間の多い記録 |  | 
 | 日照時間 | 平年値 |  | 酒田 | 189.3h | 144.7h |  | 金沢 | 272.0h | 209.1h |  | 伏木 | 264.8h | 207.0h |  | 
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	|  黄色:平年より高い(多い) 青:平年より低い(少ない)
 
 
 
 |  |  平均気温の平年差の経過(5日移動平均)
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        | 平均気温の高い記録 |  | 
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 | 平均気温 | 平年値 |  | 江差 | 1.8℃ | -0.1℃ |  | 大船渡 | 3.2℃ | 1.7℃ |  | 若松 | 2.0℃ | 0.3℃ |  | 青森 | 1.4℃ | -0.4℃ |  | 八戸 | 1.6℃ | -0.1℃ |  | 秋田 | 3.0℃ | 1.0℃ |  | 酒田 | 4.3℃ | 2.4℃ |  | 仙台 | 4.2℃ | 2.5℃ |  | 小名浜 | 6.4℃ | 4.4℃ |  | 相川 | 6.3℃ | 4.6℃ |  | 新潟 | 5.4℃ | 3.4℃ |  | 金沢 | 6.1℃ | 4.6℃ |  | 富山 | 5.6℃ | 3.5℃ |  | 宇都宮 | 5.4℃ | 3.1℃ |  | 高山 | 1.4℃ | -0.7℃ |  | 前橋 | 5.9℃ | 4.2℃ |  | 熊谷 | 6.6℃ | 4.6℃ |  | 水戸 | 5.7℃ | 3.7℃ |  | 敦賀 | 7.1℃ | 5.3℃ |  | 
                | 
 | 平均気温 | 平年値 |  | 岐阜 | 7.0℃ | 5.2℃ |  | 名古屋 | 7.1℃ | 5.2℃ |  | 甲府 | 5.7℃ | 3.6℃ |  | 河口湖 | 2.0℃ | 0.3℃ |  | 秩父 | 4.0℃ | 2.3℃ |  | 館野 | 5.6℃ | 3.3℃ |  | 銚子 | 9.0℃ | 7.2℃ |  | 上野 | 5.4℃ | 3.7℃ |  | 津 | 7.8℃ | 5.8℃ |  | 伊良湖 | 8.2℃ | 6.4℃ |  | 浜松 | 8.5℃ | 6.7℃ |  | 御前崎 | 9.3℃ | 7.4℃ |  | 静岡 | 9.1℃ | 7.4℃ |  | 三島 | 7.9℃ | 6.4℃ |  | 東京 | 8.6℃ | 6.7℃ |  | 尾鷲 | 8.5℃ | 7.0℃ |  | 横浜 | 8.3℃ | 6.5℃ |  | 館山 | 8.6℃ | 7.0℃ |  | 大島 | 9.3℃ | 7.9℃ |  | 
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 | 平均気温 | 平年値 |  | 千葉 | 8.3℃ | 6.3℃ |  | 境 | 6.9℃ | 5.4℃ |  | 京都 | 6.9℃ | 5.4℃ |  | 彦根 | 6.1℃ | 4.4℃ |  | 下関 | 9.2℃ | 7.4℃ |  | 広島 | 7.4℃ | 6.1℃ |  | 呉 | 8.1℃ | 6.6℃ |  | 福山 | 6.6℃ | 4.9℃ |  | 岡山 | 7.4℃ | 5.6℃ |  | 姫路 | 6.7℃ | 4.8℃ |  | 神戸 | 8.5℃ | 6.6℃ |  | 大阪 | 8.4℃ | 6.7℃ |  | 和歌山 | 8.1℃ | 6.8℃ |  | 奈良 | 6.0℃ | 4.6℃ |  | 山口 | 6.8℃ | 5.0℃ |  | 厳原 | 8.1℃ | 6.6℃ |  | 平戸 | 9.2℃ | 7.5℃ |  | 福岡 | 9.0℃ | 7.3℃ |  | 佐世保 | 9.2℃ | 7.2℃ |  | 
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 | 平均気温 | 平年値 |  | 佐賀 | 8.1℃ | 6.3℃ |  | 大分 | 8.6℃ | 6.8℃ |  | 長崎 | 9.4℃ | 7.8℃ |  | 熊本 | 8.5℃ | 6.4℃ |  | 延岡 | 9.0℃ | 7.3℃ |  | 屋久島 | 13.8℃ | 12.2℃ |  | 福江 | 9.7℃ | 8.1℃ |  | 松山 | 8.3℃ | 6.6℃ |  | 多度津 | 8.0℃ | 6.6℃ |  | 高松 | 7.8℃ | 6.0℃ |  | 宇和島 | 9.0℃ | 7.4℃ |  | 高知 | 9.4℃ | 7.1℃ |  | 徳島 | 8.5℃ | 6.8℃ |  | 宿毛 | 9.6℃ | 7.8℃ |  | 清水 | 11.5℃ | 9.5℃ |  | 室戸岬 | 10.0℃ | 8.3℃ |  | 西表島 | 19.9℃ | 18.5℃ |  | 父島 | 20.0℃ | 18.7℃ |  | 
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| 主な地点における冬(2006年12〜2007年2月)の降雪の深さの合計と最深積雪 | 
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 | 降雪の深さ合計 | 最深積雪 |  
| 地点 | 降雪の深さ | 平年値 | 最深積雪 | 起日 | 平年値 |  
| 旭川 | 430 cm | 496 cm | 56 cm | 1/15 | 92 cm |  
| 釧路 | 69 cm | 121 cm | 30 cm | 2/15 | 36 cm |  
| 札幌 | 423 cm | 474 cm | 78 cm | 2/13 | 100 cm |  
| 青森 | 263 cm | 626 cm | 58 cm | 12/4 | 113 cm |  
| 秋田 | 72 cm | 342 cm | 8 cm | 12/31 | 41 cm |  
| 山形 | 126 cm | 403 cm | 25 cm | 1/9 | 50 cm |  
| 盛岡 | 106 cm | 274 cm | 30 cm | 2/15 | 35 cm |  
| 仙台 | 4 cm | 74 cm | 4 cm | 2/2 | 17 cm |  
| 福島 | 33 cm | 195 cm | 7 cm | 1/9 | 25 cm |  | 
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 | 降雪の深さ合計 | 最深積雪 |  
| 地点 | 降雪の深さ | 平年値 | 最深積雪 | 起日 | 平年値 |  
| 新潟 | 5 cm | 228 cm | 2 cm | 12/4 | 38 cm |  
| 長野 | 67 cm | 243 cm | 22 cm | 1/7 | 29 cm |  
| 富山 | 61 cm | 384 cm | 20 cm | 12/29 | 69 cm |  
| 金沢 | 11 cm | 319 cm | 3 cm | 12/29 | 51 cm |  
| 福井 | 24 cm | 314 cm | 10 cm | 12/29 | 60 cm |  
| 岐阜 | 11 cm | 49 cm | 10 cm | 1/7 | 15 cm |  
| 鳥取 | 33 cm | 240 cm | 17 cm | 2/2 | 48 cm |  
| 松江 | 21 cm | 102 cm | 9 cm | 12/29 | 23 cm |  | 
| 最新積雪の起日には、2日以上同じ記録が出た場合には早い方の起日を記しています。 
 
 
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	| 【大気の流れの特徴】 500hPa天気図 | 
   
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        | 北半球高緯度ではグリーンランドからカナダ北部が正偏差となり、東シベリアからアラスカ、カナダ東部から大西洋北部、ヨーロッパ北部から西シベリアは負偏差となった。12月から1月中旬にかけて高緯度に寒気が顕著に蓄積される状態が続き、北半球全体で中緯度への寒気の南下は弱かった。 極東では、バイカル湖の西から日本付近にかけては正偏差が広がっており、アリューシャン列島付近は日付変更線の東側を中心に負偏差が見られる。このことは、地上のアリューシャン低気圧が平年に比べ東側で発達し、日本付近の冬型の気圧配置が弱く、寒気が南下しにくかったことと一致している。
 
 
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        |  2006年12〜2007年2月の500hPa高度と偏差
 等値線間隔は高度(実線):60m 偏差(破線):30m
 赤:正偏差域 青:負偏差域
 
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