片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士) 資料提供:気象庁
3月19日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、福岡と名古屋でさくらが開花した。名古屋は平年より7日早く、福岡は4日早い。
冬から春にかけて全国的に気温が記録的に高くなった影響で、各地とも平年より5日から10日程度早くなった。東京は3月21日、平年より5日早く開花した。
そして、4月24日は函館で、25日には札幌で開花し、北海道では大型連休の前半に花見シーズンを迎えた。さくら前線は55日をかけて日本列島を北上し、5月13日に稚内に到達した。
2016年【冬】 平均気温 | |||||
平均気温平年差(℃) | 高い方から 1946年以降 |
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北日本 | 1.0 | 高い | 8位 | ||
東日本 | 1.4 | かなり高い | 2位 | ||
西日本 | 1.0 | かなり高い | 3位 | ||
2016年【春】 平均気温 | |||||
平均気温平年差(℃) | 高い方から 1946年以降 |
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北日本 | 1.5 | かなり高い | 2位 | ||
東日本 | 1.6 | かなり高い | 2位 | ||
西日本 | 1.3 | かなり高い | 2位 |
3月30日、全国(沖縄・奄美を除く)で最も早く福岡、長崎、松江で満開となった。松江は平年よりも9日早い。開花以降も全国的に気温の高い状態が続いたため、各地で平年より3日から1週間程度早くなった。東京では3月31日に、平年より3日早く満開を迎え、入学式は見頃となった所が多い。
また、2016年春は全国的に高気圧に覆われる日が多く、日照時間は各地で平年を上回った。好天に恵まれた影響で、福島や仙台では平年より10日早く満開となった。
旭川では5月3日に開花、翌日に満開となるなど、北国の春は2016年も早足だった。
さくらは一般に、秋までに花芽を形成し、休眠に入りる。一定期間、冬の寒さにさらされると眠りから目覚め、気温の上昇とともに花芽が成長し、春に開花する。
しかし、冬の寒さが不十分になると、休眠打破が遅れ、かえって開花が遅れる原因になる。「冬が暖かいとさくらが寝不足になる」ともいえる。
この影響は南ほど顕著で、暖冬の年は九州や四国でさくらの開花が遅くなる傾向がある。
表2は鹿児島を例に調べたもの。
鹿児島のさくら開花平年日は3月26日だが、12月が暖かい年は平均すると3月29日になり、さくらの開花が平年よりも遅くなっている。
鹿児島の冬は東京よりも3度以上も高く、冬の高温がさくらに影響しやすい。
同じようなことは関東地方にも言える。冬でも温暖な南房総や神奈川県の沿岸部では暖冬の年、さくらの開花が東京よりも遅くなることがある。
西日本 | 鹿児島 | ||
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12月の地域平均気温平年差(℃) | 階級 | さくらの開花日(翌年) | |
2015 | 1.7 | かなり高い | 3月27日 |
2007 | 1.1 | 高い | 3月28日 |
2006 | 0.7 | 高い | 3月30日 |
2004 | 1.6 | かなり高い | 4月3日 |
2000 | 0.5 | 高い | 3月30日 |
1998 | 1.5 | かなり高い | 3月26日 |
1997 | 0.8 | 高い | 3月28日 |
1994 | 1.1 | 高い | 3月31日 |
1992 | 0.9 | 高い | 3月31日 |
1991 | 1.3 | かなり高い | 3月26日 |
全国的に開花が早かった一方で、九州や四国では開花が平年より遅くなった所もあった。大分では平年より4日遅く、徳島、高知、静岡では平年より2日遅くなった。
2016年冬は大規模なエルニーニョ現象の影響で、西日本や東日本で冬の平均気温が平年を大幅に上回る記録的な暖冬となった。そのため、九州や四国では寒さが足りず休眠打破の時期が遅れ、花芽の成長に影響があったようだ。
大分では4月8日に平年より5日遅く満開が発表されたが、すでに一部の花が散り始めていた。散った花を含めて全体の約8割が開花したと判断し、異例の満開発表となった。また、徳島でも満開の発表があったときにはすでに花が散り始めていて、例年のような見頃の時期はなかった。