片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
地域 | 平均気温平年差 | 日照時間の平年比 |
---|---|---|
北日本 | 1.5℃(かなり高い) | 126%(かなり多い) |
東日本 | 0.8℃(高い) | 118%(かなり多い) |
西日本 | 0.8℃(かなり高い) | 117%(かなり多い) |
開花
3月20日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、長崎でさくらが開花した。さくら前線が長崎からスタートしたのは1978年以来、41年ぶりのこと。 九州から関東にかけての各地では平年より3日から5日くらい早く開花した。東京は3月21日(春分の日)、平年より5日早く開花した。
全国的に気温の変動が大きく、4月10日は関東地方で冷たい雨や雪が降った。一方、4月17日は北海道で史上最も早い夏を記録した。さくら前線の北上は順調で、4月24日は函館と札幌でさくらが開花した。改元を控え、平成最後のお花見となった。
さくら前線は5月9日、釧路で終わり、約1か月半をかけて日本列島を北上したことになる。
満開
3月27日、全国のトップを切って、東京で満開となった。東京は朝から気温が高く、日最高気温は19.7℃まで上がった。ただ、花芽が少なく、全体として花が咲きそろった印象は薄い。東京の標本木が満開となっても、都内のさくらの名所では満開の時期がそろわず、お花見が一週間以上続いた。
一方、鹿児島は東京に遅れること10日以上遅れ、4月9日に満開となった。3月25日に開花してから満開まで15日かかり、2008年と並ぶ最長となった。
また、この春は全国的に高気圧に覆われる日が多く、日照時間は各地で平年を大幅に上回った。好天に恵まれた影響で、北日本でも平年より3日から一週間早く満開となり、10連休となったゴールデンウイークは多くの観光客で賑わった。
さくらの開花予想 あれこれ
1.半世紀の歴史
気象庁のさくら開花予想は昭和26年(1951年)から関東地方を対象に、昭和30年(1955年)からは全国で始まりました。毎年3月初めのさくら開花予想はニュース性が非常に高く、記者会見に新聞やテレビの記者が大勢集まりました。2007年にはさくらの開花予想に間違いが見つかり、気象庁が謝罪する珍事がありました。
しかし、2009年春、気象庁は予想を行う必要性がなくなったとして、この年を最後に終了しました。2010年から民間気象事業者による様々な予想が発表され、「どれを信じたらいいの?」と戸惑いの声が上がりました。
次に、さくらの開花を予想する方法をいくつか紹介しましょう。
2.気温から予想する方法
さくらの開花日と満開までの天気の関係は複雑ですが、気温との関係が大きいです。これまで気象台では主に気温を用いた計算式(回帰式)により開花日を予想していました。 こちらは東京の開花予想に用いている計算式の一例です。
3.つぼみの重さから予想する方法
さくらのつぼみは成長とともに重さが増します。つぼみにはこれまでの天気を蓄積しているといえます。採取した日のつぼみの重さから開花日を予想する方法で、この計算式は東京の場合です。東京ではつぼみ10個の重さが0.5グラムあれば約24日後に開花します。ただ、計算式は各地の気象台で異なり、実施している気象官署は少なかったそうです。
4.開花600℃の法則
“自分で開花日を予想してみたい” そんな気持ちから2005年ごろ、さくらの独自予想にチャレンジしてみました。花芽の成長に最も影響するのが気温です。開花までに必要な気温を「積算温度」といいます。 東京を例に、1月1日から平年の開花日(その当時3月28日でした)までの平均気温(平年値)を足し算すると約564℃です。切りがいいように「600℃」を積算温度としたのです。これはあくまで東京のさくらを予想した式です。全国共通、そのほかの場所で使えるものではありません。 残念ながら、精度はよくありません。一番の理由は休眠打破を考慮していないこと。本来は花芽が目覚めたときから、気温を積算しなければなりません。そのため、年によってばらつきが大きく、あくまで600℃は目安に過ぎないのです。
統一地方選挙とお花見
一般に、雨の日は外出がためらわれ、晴れるとレジャーに足が向かいがち。投票率はくもりの日が高くなりやすいと言われています。 しかし、近年は投票率の低下が著しく、また期日前投票が行われるようになったことから、天気との関係が次第に薄れてきています。
2019年お花見シーズンは統一地方選挙の前半戦(4月7日)と重なりました。投票率とお花見は関係があるのでしょうか?
大阪では知事選と市長選のダブル選となりました。 過去、大阪府知事選挙が行われた日の投票率と天気を調べてみました。
天気が詳細にわかる1963年以降、2019年までの16回の選挙です。 最近の選挙は寒い時期(紫線)に行われていて、4月の選挙(緑線)は1999年以来、20年ぶりのことです。 これに天気を重ねると、雨(雪)の日が目立ちます。 とくに、統一地方選挙に限ると、雨の日が半数以上を占めています。2019年は久しぶりに晴れました。
お花見が投票率に影響するのか、福井県を例に調べてみました。 過去、県知事選挙は晴れの日が多く、全体の約6割を占めます。最近では5回連続で晴れていて、大阪とは対照的です。
福井市でさくらが満開になるのは平年で4月9日です。2007年、2011年、2019年はさくらの見頃と投開票日が重なりました。 近年、投票率が伸び悩んでいるのは好天のためか、それともお花見が影響しているのでしょうか。 もちろん、選挙の争点も大きく影響しますが、統一地方選挙の前半戦は当日の天気のほかに、 さくらもあり、投票率を左右する要素が増えます。 争点を明確にし、投票行動を促すような対策がより一層、必要となりそうです。