2018年1月23日更新
【2017年のさくらの開花・満開日】
 2017年のさくらは、関東より西で遅め、関東は平年並み、東北・北海道で早めとなりました。今年は、関東から西で暖冬傾向だったため、休眠打破は鈍く、花芽の成長はやや遅れ気味となっていました。この遅れの効果は西ほど強かったとみられます。
 2月の気温は、関東より西の地域で低めとなりましたが、そのほかの地域は平年よりも高めでした。3月は北海道をのぞいて気温が低めとなりましたが、4月に入ってからは気温が高い日が続きました。
 このため、東海から西では暖冬による成長の遅れと2月・3月の低温の影響で、平年より遅い開花となった所が多くなりました。特に九州は暖冬の影響が大きいため、福岡を除いて大幅に遅くなりました。
 関東は2月にたびたび強い南風が吹いて気温が上がったことなどからほぼ平年並み、北日本は暖冬の影響がほとんどなく2月以降の気温を平均するとやや高めとなるため、開花は平年より早くなりました。
→前年の開花・満開日は 「さくら20016」


さくらの開花・満開日の観測はソメイヨシノを観測対象とし、各気象台が定めた標本木で行っている。 ソメイヨシノが分布していない北海道地方では一部を除きエゾヤマザクラを対象としている。 「開花」とは花が数輪以上開いた状態のことで、「満開」とは約80%の花が開花した状態のことである。


北海道
官署開花日平年差満開日平年差
札幌4/28-55/03-4
稚内*5/09-55/11-6
旭川*5/03-25/05-2
網走*5/05-65/07-7
釧路*5/14-35/18-2
帯広*5/01-35/02-5
室蘭5/02-45/04-7
函館4/27-34/30-4
東北
官署開花日平年差満開日平年差
青森4/17-74/21-8
秋田4/16-24/19-3
盛岡4/17-44/24-1
仙台4/07-44/13-3
山形4/14-14/17-2
福島4/08-14/12-1
関東・甲信
官署開花日平年差満開日平年差
水戸4/0314/102
宇都宮4/0324/091
前橋4/0224/071
熊谷3/28-14/072
東京3/21-54/02-1
銚子4/0114/102
長野4/1414/170
横浜3/25-14/063
甲府3/3034/096
北陸・東海
官署開花日平年差満開日平年差
静岡4/0284/129
名古屋3/2824/063
岐阜3/2824/040
4/0344/050
新潟4/08-14/13-1
富山4/0504/08-2
金沢4/0404/08-2
福井4/0524/07-2
近畿
官署開花日平年差満開日平年差
彦根4/0534/090
京都3/3134/072
大阪3/3024/061
神戸4/0364/105
奈良4/0354/083
和歌山3/3044/073
中国・四国
官署開花日平年差満開日平年差
岡山4/0134/071
広島3/2704/073
松江4/0114/07-1
鳥取4/0224/070
高松4/0254/083
松山3/3054/084
徳島4/0364/105
高知3/2974/067
下関3/2924/072
九州・沖縄
官署開花日平年差満開日平年差
福岡3/2524/054
大分4/04114/1310
長崎3/3064/074
佐賀3/3064/085
熊本4/0194/087
宮崎4/0294/097
鹿児島4/05104/1511
名瀬+1/31122/1314
那覇+1/14-42/084
南大東島+1/2772/1412
宮古島+1/30142/2718
石垣島+1/2592/1914
2017年のサクラの開花・満開日
・官署名に付した「*」はエゾヤマザクラ、「+」はヒカンザクラ、印のないものはソメイヨシノを観測対象としている。
・平年差に付した「-」は平年より早い、「+」は平年より遅いことを示す。
さくらの開花・満開日の平年差階級区分
さくらの開花を平年値(1981年〜2010年の30年間の累年平均値)と比べる場合、「平年並」は平年値との差が2日以内、「早い」とは平年値より3日以上早く、「かなり早い」は7日以上早いことを示す。
階級平年との比較
かなり早い7日以上早い
早い平年値より3日以上早い
平年並み平年値との差が2日以内
遅い平年値より3日以上遅い
かなり遅い7日以上遅い

さくらは夏頃に翌春咲く花の元となる花芽を形成し、秋に休眠(成長が止まる)に入る。休眠に入った花芽は、冬の低温に一定期間さらされると休眠から目覚め(休眠打破)、気温の上昇と共に成長を始め開花する。
休眠打破が不十分な場合は、開花が遅れたり不揃いになったりすることがある。


【さくら2017】 〜 9年ぶり さくら前線は東京からスタート 〜

片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)  資料提供:気象庁

◆開花

3月21日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、東京でさくらが開花した。平年より5日早い。さくら前線が東京からスタートしたのは2008年以来、9年ぶり。

この日は朝から冷たい雨が降り、さくらにはあいにくの空もよう。開花発表があった午前10時の気温は9.2℃だった。気温が10℃以下での開花は珍しい。

2017年冬の気温は全国的に平年を上回り、暖冬となった。一方、3月は気温の低い日が多くなったため、九州では平年よりも10日前後遅くなった。九州南部では4月になって開花、東京よりも約2週間も遅くなった。

4月になると、さくら前線の北上スピードは速くなり、4月17日は青森で平年より1週間早く開花した。

そして、さくら前線は4月23日、北海道に上陸した。松前町の職員が松前城前にある「桜前線本道上陸標準木(ソメイヨシノ)」の開花を確認した。松前町では昭和57年から独自に開花発表をしていて、今年は平年より7日早かった。

4月28日には札幌で開花し、北海道では大型連休の前半に花見シーズンを迎えた。さくら前線は54日をかけて日本列島を北上し、5月14日に釧路に到達した。


2017年【冬】 平均気温
平均気温平年差(℃)
北日本 +0.5 平年より高い
東日本 +0.8 平年より高い
西日本 +0.8 平年より高い

2017年【春】 平均気温と日照時間
平均気温平年差(℃) 日照時間の平年比(%)
北日本 +0.9 平年より高い 109 平年より多い
東日本 +0.5 平年より高い 113 平年よりかなり多い
西日本 +0.5 平年より高い 114 平年よりかなり多い
表1:2017年冬(12月-2月)と春(3月〜5月)の平均気温を平年と比べたもの。


◆満開

4月2日、東京で平年よりも1日早く満開となった。全国初の満開は2015年以来、2年ぶりで、今年は開花、満開ともに東京が一番となった。東京では開花以降、気温の低い日が多く、満開まで12日間かかった。これは観測史上4番目に長く、今年は花見期間が長くなった。

開花が遅れた影響で、西日本や東海地方では平年よりも10日から2週間くらい遅くなった。静岡では4月12日に満開、1988年に並ぶ最晩記録となった。

また、鹿児島は4月15日、平年より11日遅く、観測史上最も遅い満開となった。鹿児島では開花以降、連日気温が20℃前後の日が続いたが、満開まで10日間もかかった。

2017年春は全国的に高気圧に覆われる日が多く、日照時間は各地で平年を上回った。好天に恵まれた影響で、北日本や北陸では平年より早く満開となった。旭川では5月3日に開花、2日後に満開となるなど北国の春は2017年も早足だった。


◆さくらの開花 全国で一番早いところはどこ?

さくら前線のスタート地点(沖縄・奄美を除く)を1953年から2017年まで調べてみた。
高知県高知市が最も多く、次いで熊本県熊本市、鹿児島県鹿児島市、福岡県福岡市など四国や九州南部で開花が早いことがわかる。

東京は2017年を含めて過去5回、全国初になったことがある。最近、冬が記録的に暖かくなったことで、九州や四国ではさくらの休眠打破が不十分となる傾向があり、開花が遅れる年も目立つようになった。高知では2014年を最後に、全国初が途絶えている。

 

表2:さくらの開花が全国で最も早くなった場所(沖縄・奄美を除く)
一度に複数の地点が開花となった場合がある。
また、現在さくらの観測が行われている地点を調べたもの
順位 観測地点名 回数
1位 高知 17回
2位 熊本 8回
3位 鹿児島・福岡 7回
4位 長崎・宮崎・東京 5回
5位 名古屋 4回
6位 横浜・静岡 3回
7位 大分・佐賀・岐阜・甲府 1回

◆東京における曜日別のさくら開花日

2017年の東京のさくら開花日は3月21日「火曜日」だった。開花日を曜日別でみてみよう。

表3:東京のさくら 曜日別の開花日

すると、おもしろいことがわかった。

これまで最も多く開花したのは木曜日と土曜日で7日、逆に最も少ないのが日曜日だ。その差が歴然としている。どうして木曜日と土曜日に多くて、日曜日が少ないのだろう?

これには都市気候が関係しているのかもしれない。東京都心では経済活動に伴い週末にかけて気温が高くなることが知られている。気温に敏感なさくらは暖かくなる週末を知っているのかもしれない。一方、会社や学校が休みとなる週末の都心は静か、気温も低くなりやすい。そのため、日曜日の開花が少ないと推測できる。

みなさんはどう考えますか?