片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士) 資料提供:気象庁
3月21日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、東京でさくらが開花した。平年より5日早い。さくら前線が東京からスタートしたのは2008年以来、9年ぶり。
この日は朝から冷たい雨が降り、さくらにはあいにくの空もよう。開花発表があった午前10時の気温は9.2℃だった。気温が10℃以下での開花は珍しい。
2017年冬の気温は全国的に平年を上回り、暖冬となった。一方、3月は気温の低い日が多くなったため、九州では平年よりも10日前後遅くなった。九州南部では4月になって開花、東京よりも約2週間も遅くなった。
4月になると、さくら前線の北上スピードは速くなり、4月17日は青森で平年より1週間早く開花した。
そして、さくら前線は4月23日、北海道に上陸した。松前町の職員が松前城前にある「桜前線本道上陸標準木(ソメイヨシノ)」の開花を確認した。松前町では昭和57年から独自に開花発表をしていて、今年は平年より7日早かった。
4月28日には札幌で開花し、北海道では大型連休の前半に花見シーズンを迎えた。さくら前線は54日をかけて日本列島を北上し、5月14日に釧路に到達した。
2017年【冬】 平均気温 | ||
平均気温平年差(℃) | ||
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北日本 | +0.5 | 平年より高い |
東日本 | +0.8 | 平年より高い |
西日本 | +0.8 | 平年より高い |
2017年【春】 平均気温と日照時間 | ||||
平均気温平年差(℃) | 日照時間の平年比(%) | |||
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北日本 | +0.9 | 平年より高い | 109 | 平年より多い |
東日本 | +0.5 | 平年より高い | 113 | 平年よりかなり多い |
西日本 | +0.5 | 平年より高い | 114 | 平年よりかなり多い |
4月2日、東京で平年よりも1日早く満開となった。全国初の満開は2015年以来、2年ぶりで、今年は開花、満開ともに東京が一番となった。東京では開花以降、気温の低い日が多く、満開まで12日間かかった。これは観測史上4番目に長く、今年は花見期間が長くなった。
開花が遅れた影響で、西日本や東海地方では平年よりも10日から2週間くらい遅くなった。静岡では4月12日に満開、1988年に並ぶ最晩記録となった。
また、鹿児島は4月15日、平年より11日遅く、観測史上最も遅い満開となった。鹿児島では開花以降、連日気温が20℃前後の日が続いたが、満開まで10日間もかかった。
2017年春は全国的に高気圧に覆われる日が多く、日照時間は各地で平年を上回った。好天に恵まれた影響で、北日本や北陸では平年より早く満開となった。旭川では5月3日に開花、2日後に満開となるなど北国の春は2017年も早足だった。
さくら前線のスタート地点(沖縄・奄美を除く)を1953年から2017年まで調べてみた。
高知県高知市が最も多く、次いで熊本県熊本市、鹿児島県鹿児島市、福岡県福岡市など四国や九州南部で開花が早いことがわかる。
東京は2017年を含めて過去5回、全国初になったことがある。最近、冬が記録的に暖かくなったことで、九州や四国ではさくらの休眠打破が不十分となる傾向があり、開花が遅れる年も目立つようになった。高知では2014年を最後に、全国初が途絶えている。
順位 | 観測地点名 | 回数 |
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1位 | 高知 | 17回 |
2位 | 熊本 | 8回 |
3位 | 鹿児島・福岡 | 7回 |
4位 | 長崎・宮崎・東京 | 5回 |
5位 | 名古屋 | 4回 |
6位 | 横浜・静岡 | 3回 |
7位 | 大分・佐賀・岐阜・甲府 | 1回 |
2017年の東京のさくら開花日は3月21日「火曜日」だった。開花日を曜日別でみてみよう。
表3:東京のさくら 曜日別の開花日
すると、おもしろいことがわかった。
これまで最も多く開花したのは木曜日と土曜日で7日、逆に最も少ないのが日曜日だ。その差が歴然としている。どうして木曜日と土曜日に多くて、日曜日が少ないのだろう?
これには都市気候が関係しているのかもしれない。東京都心では経済活動に伴い週末にかけて気温が高くなることが知られている。気温に敏感なさくらは暖かくなる週末を知っているのかもしれない。一方、会社や学校が休みとなる週末の都心は静か、気温も低くなりやすい。そのため、日曜日の開花が少ないと推測できる。
みなさんはどう考えますか?