2009年7月7日更新
【2009年のさくらの開花・満開日】
2009年のソメイヨシノは3月13日に福岡で開花し、観測史上最早、日本歴代記録でも2位のスピード開花となった。名古屋は3月19日、東京は3月21日、大阪は3月24日に開花。その後、5月10日の釧路(エゾヤマザクラ)、根室(チシマザクラ)まで約2カ月間にわたり観測された。南西諸島の一部を除いてほとんどの地点で平年より早い開花となった。
    →昨年の開花・満開日は 「さくら2008」



さくらの開花・満開日の観測はソメイヨシノを観測対象とし、各気象台が定めた標本木で行っている。 ソメイヨシノが分布していない北海道地方では一部を除きエゾヤマザクラ、チシマザクラを対象としている。 「開花」とは花が数輪以上開いた状態のことで、「満開」とは約80%の花が開花した状態のことである。


北海道
官署開花日平年差満開日平年差
稚内*5/10-65/12-7
旭川*5/3-45/4-5
網走*5/4-95/7-8
札幌5/1-45/4-4
帯広*5/1-65/4-5
釧路*5/10-85/14-8
根室@5/10-105/16-9
室蘭5/3-55/7-5
浦河*5/5-65/8-6
函館4/25-85/1-6
東北
官署開花日平年差満開日平年差
青森4/18-84/22-9
秋田4/14-54/19-5
盛岡4/13-104/18-9
酒田4/11-54/14-6
山形4/11-64/13-8
仙台4/7-54/10-8
福島4/6-54/9-6
関東・甲信
官署開花日平年差満開日平年差
長野4/8-64/12-7
宇都宮3/26-84/6-4
前橋3/30-24/80
熊谷3/25-64/5-3
水戸3/27-84/8-2
甲府3/20-93/31-4
銚子4/104/7-2
東京3/21-74/2-3
横浜3/22-64/4-1
大島3/26-44/4-2
八丈島4/4+24/18+8
北陸・東海
官署開花日平年差満開日平年差
輪島4/6-54/12-3
新潟4/7-44/13-3
金沢4/3-34/10-1
富山3/30-94/8-4
福井3/26-104/7-3
岐阜3/18-114/1-4
名古屋3/19-94/3-2
3/23-94/2-5
静岡3/19-93/27-9
近畿
官署開花日平年差満開日平年差
舞鶴3/25-104/6-3
京都3/19-124/5-2
彦根3/28-74/8-2
神戸3/23-74/60
大阪3/24-64/60
和歌山3/21-74/3-1
潮岬3/22-63/30-7
奈良3/23-94/60
中国・四国
官署開花日平年差満開日平年差
松江3/22-124/6-3
鳥取3/22-114/7-1
下関3/18-114/1-6
広島3/22-74/50
岡山3/21-104/5-2
松山3/17-114/1-4
高松3/20-104/3-3
高知3/16-73/24-8
徳島3/23-64/3-3
九州・沖縄
官署開花日平年差満開日平年差
厳原3/18-103/26-9
福岡3/13-133/23-11
佐賀3/19-73/29-5
大分3/17-103/28-8
長崎3/21-43/27-7
熊本3/16-83/24-9
鹿児島3/19-74/1-2
宮崎3/16-93/23-11
福江3/23-54/1-3
名瀬+1/22+42/4+5
石垣島+1/19+42/16+12
宮古島+1/27+92/7-2
那覇+1/2-171/23-12
南大東島+1/25+62/9+8
2009年のサクラの開花・満開日
・官署名に付した「*」はエゾヤマザクラ、「@」はチシマザクラ、「+」はヒカンザクラ、印のないものはソメイヨシノを観測対象としている。
・平年差に付した「-」は平年より早い、「+」は平年より遅いことを示す。
さくらの開花・満開日の平年差階級区分
さくらの開花を平年値(1971年〜2000年の30年間の累年平均値)と比べる場合、「平年並」は平年値との差が2日以内、「早い」とは平年値より3日以上早く、「かなり早い」は7日以上早いことを示す。
階級平年との比較
かなり早い7日以上早い
早い平年値より3日以上早い
平年並み平年値との差が2日以内
遅い平年値より3日以上遅い
かなり遅い7日以上遅い

さくらは夏頃に翌春咲く花の元となる花芽を形成し、秋に休眠(成長が止まる)に入る。休眠に入った花芽は、冬の低温に一定期間さらされると休眠から目覚め(休眠打破)、気温の上昇と共に成長を始め開花する。
休眠打破が不十分な場合は、開花が遅れたり不揃いになったりすることがある。

→ 気温の経過についての詳細は天候のまとめを参照


【2009年のさくら解説】〜 福岡で日本歴代2位の早咲き 〜

◆開花

2009年のさくら前線(沖縄・奄美を除く)は3月13日、福岡からスタートした。福岡では平年より13日早く、観測史上最も早い開花となった。日本歴代の記録を見ても1959年3月10日潮岬に次ぐスピード開花であった。
2009年の冬は、東日本で1947年以降2番目に高く、北日本では3番目に高くなるなど、記録的な暖冬となった。そのため、さくらの開花は全国的に平年を大幅に上回る早咲きとなり、観測史上3位以内の記録的な早咲きとなった地点は全国68地点中26地点に上った。
東京では平年より7日早い3月21日に開花した。2000年以降、平年より早く開花した年は8年となり、早咲きが定着した感がある。また、青森の弘前公園では観測史上7番目に早い4月17日に開花し、夜間のライトアップや出店など、23日からの本まつりを前に対応に追われた。


◆満開

全国的に平年を大幅に上回る早さで満開となった。特に、九州や北日本では平年より1週間から10日程度早まったところがほとんどだった。一方、3月下旬は西日本と東日本で平年を2℃〜3℃下回る顕著な低温となり、その頃さくらの時期を迎えた近畿や中国、関東などでは、開花から満開までの期間が10日〜2週間となったところがあった。京都では3月19日に開花し、満開は4月5日と、満開までの期間は実に17日に及び、観測史上最長記録となった。また、東京では開花から満開まで12日かかり、最近では2004年以来5年ぶりに花見の期間が長かったことになる。

◆2009年さくらトピックス

1.2009年さくら開花ベスト3

2009年5月現在、さくら(ソメイヨシノなど)の観測を行っている気象台は全国で68ヶ所ある。今年はそのうちの26ヶ所(タイ記録を含む)で、観測史上3位以内の記録的な早咲きとなった。地域としては沖縄から北陸までの広い範囲であるが、その多くは西日本に集中した。

観測史上(1953年〜2009年)
1位2位3位
開花日地点名開花日地点名開花日地点名
3/13福岡3/16熊本3/19名古屋★
3/16宮崎3/17大分3/19京都
3/17松山3/18厳原★3/20甲府★
3/18下関3/19鹿児島★3/23神戸
3/22鳥取3/20高松3/23津★
3/25舞鶴★3/21岡山3/26宇都宮★
3/26福井3/22松江★  
  3/23奈良★  
  5/10釧路★  
  5/10根室  
★印はタイ記録

2.さくら開花 日本歴代記録(1953年以降)

1953年以降、日本で最も早く開花したのは1959年3月10日、和歌山の潮岬である。しかし、さくらの観測を行っていた測候所の無人化が年々進み、観測地点の減少が著しい。特に、2007年10月に無人化された種子島や2001年の日田(大分)、宿毛(高知)は早咲きの地点として知られている。これらの地点を加えて、歴代の記録を見直すと次のようになった。

           
さくらの開花 日本歴代記録(1953年〜2009年)
順位月日観測地点無人化
1位
19593/10潮岬 
19733/10種子島2007年10月
19553/10種子島2007年10月
19903/12宿毛2001年3月
 3/12日田2001年3月
2位
20093/13福岡 
19663/13宿毛2001年3月
3位
19903/14福岡 
  高知 
注意:水色で示した箇所は無人化した地点の記録

一方、近年、全国的にさくらの開花が早まっているが、さくらの花芽の成長には一定期間低温にさらされる必要がある。これを「休眠打破」といい、さくらに限らず春に咲く花に共通した現象である。しかし、最近の記録的な暖冬を受けて、鹿児島などでは休眠打破の遅れが目立ってきた。今後、温暖化が進行し、冬の気温が上昇すると、さくらの開花が今よりも遅くなるまたは開花しないなどの弊害を指摘する専門家も多い。


3.東京 開花から満開までの日数

東京では開花してから満開までにかかる日数は約1週間といわれている。しかし、実際は気温が大きく関わっていて、気温が低ければ満開まで時間がかかり、逆に気温が高ければ早まる傾向がある。下記の表は満開までの日数を短い順、長い順に並べたものである。

開花から満開までの日数 短い方順位
順位 日数 開花日 満開日
1位 196434月2日4月5日
2位 199843月27日3月31日
197243月28日4月1日
196944月6日4月10日
5位 200853月22日3月27日
200353月27日4月1日
200253月16日3月21日
200153月23日3月28日
199453月31日4月5日
196853月29日4月3日
196354月1日4月6日
196154月1日4月6日
開花から満開までの日数 長い方順位
順位日数開花日満開日
1位 1966163月20日4月5日
2位 1989143月20日4月3日
3位 1987133月23日4月5日
1981133月26日4月8日
1956133月26日4月8日
6位 2009123月21日4月2日
1979123月23日4月4日
195512 3月24日4月5日

これをみると、短い年で3日間、長い年で16日間と極端に差があることが分かる。最近では開花時期の気温が高いため、2001年・2002年・2003年・2008年と続けて満開までの日数が5日と短くなった。そういう意味では2009年は寒の戻りが厳しかったとは言え、珍しいのかもしれない。

片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
資料提供:気象庁