片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
地域 | 平均気温平年差 | 日照時間の平年比 |
---|---|---|
北日本 | 1.1℃(かなり高い) | 102%(平年並み) |
東日本 | 0.8℃(高い) | 111%(かなり多い) |
西日本 | 0.5℃(高い) | 115%(かなり多い) |
春の気温は北日本でかなり高く、東・西日本で高くなった。
4月は寒気の影響をうけて、全国的に低くなったが、3月と5月は暖かい空気が流れ込みやすく、気温が高くなった。
そして、日照時間は移動性高気圧に覆われる日が多かったため、東日本の太平洋側と西日本でかなり多く、東日本の日本海側で多くなった。
開花
3月14日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、東京でさくらが開花した。さくら前線が東京からスタートしたのは2017年以来、3年ぶりのこと。
この日は低気圧が関東沖を通過した影響で、冷たい雨や雪が降る一日となった。東京都心も予想以上に気温が下がり、午後1時半からみぞれに変わり、午後3時は雪が横殴りに強まった。雪のなかで開花発表となったのは珍しい。
さくらの開花は全国的に早く、九州から北陸にかけての各地は平年より5日から10日くらい早く開花した。
一方で、気温の変動が大きく、3月29日は関東地方で冷たい雨や雪が降った。都心でも積雪1センチを観測、多摩地域には大雪警報も出された。
さくら前線の北上は北日本でも順調で、4月26日は函館でさくらが開花した。大型連休は例年、お花見で賑わうが、今年は新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が4月7日に出され、大型連休を含めて、人の往来が途絶えた。
さくら前線は5月10日、稚内と釧路で終わり、約2か月をかけて日本列島を北上したことになる。
満開
3月22日、全国のトップを切って、東京で満開となった。平年より12日早く、記録が残る1953年以降、2番目に早い満開となった。東京は朝からよく晴れ、気温も上昇、日最高気温は23.7℃まで上がった。
関東地方では熊谷や八王子などで25℃を超え、初夏日となった。
一方、鹿児島は東京に遅れること1か月、4月19日に満開となった。4月1日に開花してから満開まで18日かかり、1953年以降、最も長くなった。
鹿児島が満開になった頃、青森でさくらが開花し、秋田では満開になっていて、鹿児島と北日本のお花見が同時期になるのは珍しい。
記録的な暖冬 東京のさくら史上最早
2020年冬の日本の平均気温は基準値(1981〜2010年の30年平均値)を1.66℃上回り、1898年の統計開始以降、最も高い値となりました。その影響で、東京のさくらも記録が残る1953年以降、最も早い3月14日に開花しました。
温暖化の進行で、さくらの開花が年々、早まる傾向にありますが、今年は突出してさくらの成長が早かった印象です。
- 3月14日 (2020年)
- 3月16日 (2002年、2013年)
- 3月17日 (2018年)
- 3月18日 (2004年)
新型コロナウイルス感染拡大で花見の名所も封鎖
2019年末、中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎患者が急増したことに端に発した新型コロナウイルス(COVID-19)は瞬く間にアジア、欧州、北米へと広がりました。
2020年2月以降、各国で出入国禁止、都市封鎖など厳しい感染拡大防止対策が取られ、世界経済の急激な冷え込みは2008年の金融危機(リーマンショック)を上回る、底なしの経済危機を引き起こしました。
この影響はお花見にも。
東京都は3月27日、新型コロナウイルス感染拡大で、都民に花見を控えるよう呼びかけました。
上野恩賜、井の頭恩賜、代々木などの都立の公園や都が管理する河川敷は人が立ち入れないように封鎖されました。
また、人が集まり、密になることを防ぐため、各地の花見イベントも中止となり、2011年春の東日本大震災以来の自粛ムードが強い花見シーズンとなりました。
SNSの投稿控えて 弘前市長が異例の呼び掛け
全国有数の花見の名所である弘前公園も新型コロナウイルス感染拡大で、さくらまつりの開催が中止となりました。毎年200万人を超える来園者があるだけに、地域経済に与える影響は大きく、市民も複雑な心境でした。
さらに、市長が異例の呼び掛けをして、議論を呼びました。弘前公園の桜の開花状況などの情報を、会員制交流サイト(SNS)に投稿しないよう市民に要請したのです。公園に立ち入ることはできませんが、周囲から桜を眺めることができるため、人が密になったり、人の流れを生んだりすることを避ける狙いがあったようです。