2007年の台風シーズンは4月1日、台風1号の発生から始まった。
台風1号の発生は昨年と比べて38日早かったが、しばらくは台風の発生が少ない状態が続いた。8月までの発生数は9個と平年の約64%に留まった。9月以降は今までの遅れを取り戻すかのように平年を上回る発生数となり、結局、年間発生数は平年並みの24個となった。

台風の上陸数は4号(7月)、5号(8月)、9号(9月)の合計3個だった。台風の発生数が8月まで少なかったため、発生数に対する上陸数の割合は9月上旬の段階で3割を超え、非常に高い上陸率となった。

台風 | 上陸日時 | 上陸地点 | 上陸時の 中心気圧 |
上陸時の 最大風速 |
上陸時の 大きさ・強さ |
4号 | 7月14日14時過ぎ | 鹿児島県鹿屋市付近 | 945hPa | 40m/s | 大型で非常に強い |
5号 | 8月2日18時前 | 宮崎県日向市付近 | 960hPa | 40m/s | 強い |
9号 | 9月7日0時前 | 静岡県伊豆半島南部 | 970hPa | 35m/s | 強い |
■台風4号
順位 | 地点名 | 総雨量 |
1 | 宮崎・神門 | 913mm |
2 | 宮崎・鰐塚山 | 911mm |
3 | 宮崎・えびの | 876mm |
4 | 宮崎・西都 | 875mm |
5 | 宮崎・深瀬 | 857mm |
6 | 宮崎・見立 | 843mm |
7 | 宮崎・北方 | 837mm |
宮崎・日向 | ||
9 | 宮崎・国富 | 833mm |
10 | 宮崎・鞍岡 | 830mm |
台風4号は7月9日9時、カロリン諸島で発生した。12日には沖縄の南海上で中心気圧930hPa、最大風速50m/sまで発達し、非常に強い勢力で南西諸島付近を北上した。台風の眼は径100kmと大きく、南東側に非常に発達した対流雲を伴っていた。
13日は沖縄本島に最も接近し、那覇では8時14分に7月としては最高の最大瞬間風速56.3m/s(東南東)を観測した。沖縄県では強風にあおられ転倒、屋根から落下する人が相次ぎ、県内の最大約10万世帯が停電した。また、宜野湾市ではゴルフ練習場の鉄塔が倒壊した。
気象庁は「7月の台風としては観測史上最強クラスで西日本に上陸するおそれがある」と最大限の警戒を呼びかけた。15日に開催を予定していた「横浜開港記念みなと祭・第52回国際花火大会」は観客の安全が確保できないとの理由から、1956年開催開始以来初めて順延日を含めて中止となった。
台風4号は非常に強い勢力を保ったまま14日14時過ぎ、鹿児島県鹿屋市付近に上陸した。台風の雲は円形を保ち、眼も崩れていない状態で、中心付近の雨雲は非常の発達していた。
台風4号は、7月の上陸台風としては1970年台風2号(紀伊半島上陸)を上回り1951年観測史上最も強い勢力で上陸した。年間記録でみると、中心気圧945hPaの上陸は2004年台風18号以来3年ぶりのこと。
梅雨前線が太平洋側に停滞していたため、台風が上陸する前から局地的に大雨となり、記録的短時間大雨情報は鹿児島県、京都府、滋賀県、千葉県に発表された。総雨量は上位10地点すべて宮崎県が占め、台風南東側の活発な対流雲がかかった神門と鰐塚山で900ミリを超える記録的な大雨となった(右表)。
一方、貯水率が低下していた高知県の早明浦ダムはこの大雨で貯水率44%から一気に100%まで回復した。吉野川水系の取水制限は14日15時、全面解除された。
那覇 | 東南東の風 56.3m/s(13日 8:14) 7月極値 |
油津 | 南南西の風 55.9m/s(14日14:17) 年極値 |
沖永良部 | 南南東の風 51.7m/s(13日14:32) 7月極値 |
名護 | 南東の風 50.9m/s(13日11:14) 7月極値 |
鹿児島県では増水した川や用水路に流されて2人死亡した。7県計約8500世帯、約2万人に避難指示・勧告が出された。また、強風による転倒事故が相次いだ。
■台風5号
台風5号は7月29日15時、マリアナ諸島で発生した。8月1日には日本の南海上で中心気圧945hPa、最大風速45m/sまで発達、台風の眼は大きいが発達した対流雲はコンパクトにまとまり、風雨の強い範囲は比較的狭かった。台風は、亜熱帯高気圧が日本の東側で強かったため北西進して、2日18時前に宮崎県日向市付近に上陸した。発達した対流雲は台風の北〜西側に集中し、大分県や宮崎県で豪雨となった。
2007年8月2日18時 大分県で記録的短時間大雨 佐伯市付近で120ミリ以上
2007年8月2日18時 宮崎県で記録的短時間大雨 延岡市付近で120ミリ以上
■最大1時間降水量 (2007年8月2日)
起時 (前1時間) |
地点名 | 降水量 | 備考 |
18:30 | 宮崎・見立 | 91ミリ | 年極値 |
17:30 | 大分・温見 | 87ミリ | 年極値 |
17:10 | 宮崎・神門 | 84ミリ | |
18:10 | 宮崎・諸塚 | 73ミリ | |
18:20 | 大分・臼杵 | 71ミリ | 8月極値 |
17:40 | 宮崎・北方 | 71ミリ | 8月極値 |
17:50 | 大分・宇目 | 67ミリ | 8月極値 |
19:50 | 大分・湯布院 | 62ミリ | 8月極値 |

宮崎県延岡市にあるウィンドプロファイラは台風の通過を捉えていた。風向は18時以降、南東から南、南西へと時計回りに変化した。南東から南西に変化するタイミングが下層と上層で違うことから、上陸による衰弱が始まっていたことが分かる。このようにウィンドプロファイラでは地上から上層にかけて詳細な風の状態が分かるため、台風の鉛直構造が容易に把握できる利点がある。
■台風9号
台風9号は8月29日9時、南鳥島近海で発生した。発生初期は北上したが、その後進路を西に変えて父島の北を通過、伊豆諸島南部付近で転向し、7日0時に伊豆半島南部に上陸した。台風が西進した影響で、関東は西部山沿い(箱根・多摩付近)で強い雨が降り続いた。
観測地点 | 総雨量 | 記録 |
東京・小河内 | 694ミリ | 年1位 |
静岡・湯ヶ島 | 692ミリ | 年1位 |
神奈川・箱根 | 652ミリ | 年1位 |
静岡・御殿場 | 631ミリ | 年1位 |
埼玉・浦山 | 604ミリ |

2007年9月6日20時 気象レーダー(気象庁)
上陸間際の気象レーダーをみると、台風の円形が崩れていないことが分かる。西側から乾燥した空気が入らなかったことが影響したのか、台風の雲は上陸してもなかなか崩れなかった。また、関東平野に局地前線が形成されなかったため、関東西部山沿いと伊豆半島で局地的な大雨となった。東京都心では時折、シャワーのような雨が降る程度で、台風本体の雨雲がかかった18時以降、強い雨が絶え間なく降るようになった。
東京奥多摩で600ミリを超える豪雨となったため下流の多摩川が増水し、世田谷区の一部住民に避難勧告が出された。増水が収まった後、多摩川河川敷には大量の流木や土砂、ゴミが堆積した。
なお、気象庁は11月13日、台風9号の上陸時間と上陸地点を修正した。
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修正:9月7日0時前 静岡県伊豆半島南部