2021
2022年1月12日更新
【2021年のさくらの開花・満開日】
2021年のさくらは、平年よりかなり早い所が多くなりました。
3月11日に広島で開花し、松江も14日に咲くなど、観測史上最も早い開花となった地点が多くありました。5月11日に稚内や釧路でも満開になり、2021年のさくらシーズンも終わりを迎えました。

2021年の冬は、たびたび非常に強い寒気が流れ込みましたが、冬の入り口である11月の気温がかなり高かったため、休眠打破は鈍めの所が多いとみられます。
2月、3月は気温がかなり高い状態が続きました。休眠打破が鈍い影響よりも、2月、3月の大幅な高温の影響が大きいため、開花は平年よりかなり早くなったとみられます。北日本も平年よりかなり早くなっています。

→ 前年の開花・満開日は 「さくら2020」


さくらの開花・満開日の観測はソメイヨシノを観測対象とし、各気象台が定めた標本木で行っている。 ソメイヨシノが分布していない北海道地方では一部を除きエゾヤマザクラを対象としている。 「開花」とは花が数輪以上開いた状態のことで、「満開」とは約80%の花が開花した状態のことである。


北海道
官署開花日平年差満開日平年差
札幌4/22-94/27-9
稚内*5/8-55/11-5
旭川*4/29-55/3-4
網走*5/6-45/7-6
釧路*5/8-85/11-8
帯広*4/24-84/27-8
室蘭4/27-75/4-5
函館4/20-84/23-9
東北
官署開花日平年差満開日平年差
青森4/13-94/17-9
秋田4/4-134/7-15
盛岡4/9-94/13-11
仙台3/28-113/31-13
山形4/2-114/5-13
福島3/25-133/29-13
関東・甲信
官署開花日平年差満開日平年差
水戸3/20-103/30-7
宇都宮3/20-103/31-6
前橋3/21-83/28-8
熊谷3/19-83/29-5
東京3/14-103/22-9
銚子3/22-83/28-9
長野3/29-134/1-15
横浜3/17-83/27-5
甲府3/18-73/29-4
北陸・東海
官署開花日平年差満開日平年差
静岡3/20-43/28-5
名古屋3/17-73/28-5
岐阜3/16-93/27-6
3/20-93/25-9
新潟3/29-103/31-13
富山3/24-103/28-11
金沢3/23-113/29-10
福井3/22-103/27-11
近畿
官署開花日平年差満開日平年差
彦根3/22-103/30-9
京都3/16-103/26-9
大阪3/19-83/28-7
神戸3/24-33/30-6
奈良3/21-73/30-5
和歌山3/18-63/27-7
中国・四国
官署開花日平年差満開日平年差
岡山3/20-83/29-6
広島3/11-143/25-9
松江3/14-153/27-9
鳥取3/19-103/29-7
高松3/15-123/27-8
松山3/15-93/27-7
徳島3/25-34/1-3
高知3/15-73/23-7
下関3/16-103/26-9
九州・沖縄
官署開花日平年差満開日平年差
福岡3/12-103/22-9
大分3/18-63/30-5
長崎3/14-93/23-10
佐賀3/17-73/24-9
熊本3/17-53/27-5
宮崎3/16-73/29-4
鹿児島3/17-93/30-6
名瀬+1/2552/1-1
那覇+1/4-122/1-3
南大東島+------------
宮古島+1/16-12/101
石垣島+1/2792/8-2
2021年のサクラの開花・満開日
・官署名に付した「*」はエゾヤマザクラ、「+」はヒカンザクラ、印のないものはソメイヨシノを観測対象としている。
・平年差に付した「-」は平年より早い、「+」は平年より遅いことを示す。
さくらの開花・満開日の平年差階級区分
さくらの開花を平年値(1991年〜2020年の30年間の累年平均値)と比べる場合、「平年並」は平年値との差が2日以内、「早い」とは平年値より3日以上早く、「かなり早い」は7日以上早いことを示す。
階級平年との比較
かなり早い7日以上早い
早い平年値より3日以上早い
平年並み平年値との差が2日以内
遅い平年値より3日以上遅い
かなり遅い7日以上遅い

さくらは夏頃に翌春咲く花の元となる花芽を形成し、秋に休眠(成長が止まる)に入る。休眠に入った花芽は、冬の低温に一定期間さらされると休眠から目覚め(休眠打破)、気温の上昇と共に成長を始め開花する。
休眠打破が不十分な場合は、開花が遅れたり不揃いになったりすることがある。


【さくら2021】〜 コロナ禍2度目の春 記録的な早咲きでGW待たずに北海道で花見 〜

片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
地域平均気温平年差日照時間の平年比
北日本1.3℃(かなり高い)103%(平年並み)
東日本1.2℃(かなり高い)102%(平年並み)
西日本1.1℃(かなり高い)100%(平年並み)
※2021年春(3月~5月)の平均気温と日照時間を平年と比べたもの。

春の気温は全国的に平年を大幅に上回り、北日本と西日本では1946年以降、2番目の高温、東日本も3番目の高温となった。とくに、3月の暖かさが際立ち、北・東・西日本で1946年以降、最も高くなった。
4月は寒気の影響もあり、気温の変化も大きくなった。春の日照時間は高気圧に覆われる日もあり、全国的に平年並みとなった。

開花

3月11日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、広島でさくらが開花した。さくら前線が広島からスタートしたのは記録が残る1953年以降で初めてのこと。
また、全国でみても、2010年3月10日に高知で開花した以来、日本歴代2位の早咲きとなった。なお、広島では2007年7月より新しい標本木となっている。

さくらの開花は記録的に早く、現在でも観測が続けられている58地点のうち、ほぼ半数で、観測史上最も早い開花となった。主な地点は広島、福岡、東京、名古屋、大阪、京都、金沢、長野、山形など

さくら前線の北上は北日本でも順調で、4月20日は函館でさくらが開花した。札幌では4月22日、観測史上2番目の早さでさくらが開花し、大型連休を待たずにお花見シーズン到来となった。さくら前線は5月8日、稚内と釧路で終わり、約2か月をかけて日本列島を北上した。
世界的なコロナ禍のなかで迎えた2度目の春だったが、大勢が集まる花見は自粛が続き、イベントもほとんど行われなかった。少人数で、近場で花見をするスタイルが定着したようだ。

満開

3月22日、全国のトップを切って、福岡と東京で満開となった。福岡では最も早く、東京は観測史上2番目の早さとなった。この日は全国的に晴れ、気温も上昇し、九州の佐賀市や久留米市などで30℃以上の真夏日となった。

さくらが開花した後も、気温の高い状態が続き、各地で満開も非常に早くなった。佐賀、長崎、松江、金沢、長野、新潟、仙台などで観測史上最も早い満開となった。
各地で開花から満開までの日数が短くなるなかで、広島だけは開花から満開まで2週間と非常に長くなった。

記録的な暖春 広島で日本歴代2位の早咲き

2021年春の日本の平均気温は基準値(1991〜2020年の30年平均値)を1.1℃上回り、1898年の統計開始以降、2番目に高い値となりました。春の気温は100年あたり1.53℃の割合で上昇しています。
温暖化の進行で、さくらの開花が年々、早まる傾向にありますが、2021年は突出してさくらの開花が早かった印象です。

こちらは1953年以降の開花の歴代全国ランキングです。2020年現在、さくらの観測が行われている地点を対象としています。気象庁の生物季節観測によると、これまで最も早く開花したのは2010年3月10日の高知です。2021年は11年ぶりの記録的な早咲きとなりました。そのほか上位をみても、2010年以降がほとんどで、毎年のように記録が更新されている様子がわかります。

順位月日観測地点
1位20103/10高知
2位20213/11広島
3位20213/12福岡
4位2013、20093/13福岡
20133/13宮崎
5位2021、20203/14東京
20213/14長崎
20213/14松江
20133/14大分
2010、19903/14福岡
20103/14松山
19903/14高知

気象庁 生物季節観測を大幅に削減

気象庁は1月、1953年(昭和28年)から各地の気象台で行っていた生物季節観測を大幅に削減、廃止を行いました。これまでは植物34種目、動物23種目で開花や初鳴きなどの観測を行っていましたが、気象台周辺の生態環境変化などで、適切な場所に標本木を確保することや動物季節観測では対象となる生き物を見つけることが難しくなっているためです。

気象庁は動物季節観測のすべて廃止し、植物はこれまでの34種目から9種目にすることを決めました。今後も観測を続けるのは以下の9種目です。

気象庁の観測が縮小されるなか、独自で観測を続けている所も

【独自観測①】愛媛県宇和島市の取り組み

気象庁の宇和島測候所は2006年に無人化したために、さくらの観測は2005年が最後になりました。その後は宇和島市が観測を引き継ぎ、独自にさくらの開花発表をしています。

もともと愛媛県南予に位置する宇和島市は全国で最も早く開花する場所として有名でした。宇和島市はその知名度を活かすために、気象庁OBを「さくら観測員」に委託しています。

同市の観測によると 、2006年以降も、2008年・2009年・2011年・2013年・2015年、2019年で全国トップ開花となったそうです。測候所時代を含めれば、これまでに全国一番となったのは12回となり、高知に次ぐ記録です。なお、2021年は3月12日に開花したそうです。

【独自観測②】高知県宿毛市の取り組み

もうひとつ、非公式ながら独自観測を続けている自治体があります。それは高知県宿毛市 です。宿毛市にも2001年まで気象庁の宿毛測候所があり、測候所が無人化されたことで、さくらの開花発表も行われなくなりました。

宿毛市も全国で一二位を争うほどさくらが早く咲く場所で、非公式ながら日本歴代3位(1990年3月12日)の記録を持っています。測候所の観測は終了しましたが、宿毛市はその財産を継承し、独自に標本木を定め、毎年、さくらの開花発表(5輪以上)を行っています。

2021年はなんと! 3月10日に開花したとのこと。宿毛市は“日本一早い開花!”と鼻息も荒く、開花宣言です。

【独自観測③】北海道松前町の取り組み

これまで紹介してきた宇和島市や宿毛市は気象庁の観測を引き継ぐ形で、さくらの開花発表を行っていますが、全く独自でさくらの開花を発表している自治体もあります。

それは北海道最南端の町、松前町です。松前町はさくらの街として知られ、松前公園には250種類一万本ものさくらが植えられています。

松前町は気象庁の観測が行われている函館地方気象台よりも早く、道内で最も早くさくらが開花することから、全国ニュースとして取り上げられることも多いです。