片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
地域 | 平均気温平年差 | 日照時間の平年比 |
---|---|---|
北日本 | 1.3℃(かなり高い) | 103%(平年並み) |
東日本 | 1.2℃(かなり高い) | 102%(平年並み) |
西日本 | 1.1℃(かなり高い) | 100%(平年並み) |
春の気温は全国的に平年を大幅に上回り、北日本と西日本では1946年以降、2番目の高温、東日本も3番目の高温となった。とくに、3月の暖かさが際立ち、北・東・西日本で1946年以降、最も高くなった。
4月は寒気の影響もあり、気温の変化も大きくなった。春の日照時間は高気圧に覆われる日もあり、全国的に平年並みとなった。
開花
3月11日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、広島でさくらが開花した。さくら前線が広島からスタートしたのは記録が残る1953年以降で初めてのこと。
また、全国でみても、2010年3月10日に高知で開花した以来、日本歴代2位の早咲きとなった。なお、広島では2007年7月より新しい標本木となっている。
さくらの開花は記録的に早く、現在でも観測が続けられている58地点のうち、ほぼ半数で、観測史上最も早い開花となった。主な地点は広島、福岡、東京、名古屋、大阪、京都、金沢、長野、山形など
さくら前線の北上は北日本でも順調で、4月20日は函館でさくらが開花した。札幌では4月22日、観測史上2番目の早さでさくらが開花し、大型連休を待たずにお花見シーズン到来となった。さくら前線は5月8日、稚内と釧路で終わり、約2か月をかけて日本列島を北上した。
世界的なコロナ禍のなかで迎えた2度目の春だったが、大勢が集まる花見は自粛が続き、イベントもほとんど行われなかった。少人数で、近場で花見をするスタイルが定着したようだ。
満開
3月22日、全国のトップを切って、福岡と東京で満開となった。福岡では最も早く、東京は観測史上2番目の早さとなった。この日は全国的に晴れ、気温も上昇し、九州の佐賀市や久留米市などで30℃以上の真夏日となった。
さくらが開花した後も、気温の高い状態が続き、各地で満開も非常に早くなった。佐賀、長崎、松江、金沢、長野、新潟、仙台などで観測史上最も早い満開となった。
各地で開花から満開までの日数が短くなるなかで、広島だけは開花から満開まで2週間と非常に長くなった。
記録的な暖春 広島で日本歴代2位の早咲き
2021年春の日本の平均気温は基準値(1991〜2020年の30年平均値)を1.1℃上回り、1898年の統計開始以降、2番目に高い値となりました。春の気温は100年あたり1.53℃の割合で上昇しています。
温暖化の進行で、さくらの開花が年々、早まる傾向にありますが、2021年は突出してさくらの開花が早かった印象です。
こちらは1953年以降の開花の歴代全国ランキングです。2020年現在、さくらの観測が行われている地点を対象としています。気象庁の生物季節観測によると、これまで最も早く開花したのは2010年3月10日の高知です。2021年は11年ぶりの記録的な早咲きとなりました。そのほか上位をみても、2010年以降がほとんどで、毎年のように記録が更新されている様子がわかります。
順位 | 年 | 月日 | 観測地点 |
---|---|---|---|
1位 | 2010 | 3/10 | 高知 |
2位 | 2021 | 3/11 | 広島 |
3位 | 2021 | 3/12 | 福岡 |
4位 | 2013、2009 | 3/13 | 福岡 |
2013 | 3/13 | 宮崎 | |
5位 | 2021、2020 | 3/14 | 東京 |
2021 | 3/14 | 長崎 | |
2021 | 3/14 | 松江 | |
2013 | 3/14 | 大分 | |
2010、1990 | 3/14 | 福岡 | |
2010 | 3/14 | 松山 | |
1990 | 3/14 | 高知 |
気象庁 生物季節観測を大幅に削減
気象庁は1月、1953年(昭和28年)から各地の気象台で行っていた生物季節観測を大幅に削減、廃止を行いました。これまでは植物34種目、動物23種目で開花や初鳴きなどの観測を行っていましたが、気象台周辺の生態環境変化などで、適切な場所に標本木を確保することや動物季節観測では対象となる生き物を見つけることが難しくなっているためです。
気象庁は動物季節観測のすべて廃止し、植物はこれまでの34種目から9種目にすることを決めました。今後も観測を続けるのは以下の9種目です。
- あじさいの開花
- いちょうの黄葉・落葉
- うめの開花
- かえでの紅葉・落葉
- さくらの開花・満開
- すすきの開花
気象庁の観測が縮小されるなか、独自で観測を続けている所も
【独自観測①】愛媛県宇和島市の取り組み
気象庁の宇和島測候所は2006年に無人化したために、さくらの観測は2005年が最後になりました。その後は宇和島市が観測を引き継ぎ、独自にさくらの開花発表をしています。
もともと愛媛県南予に位置する宇和島市は全国で最も早く開花する場所として有名でした。宇和島市はその知名度を活かすために、気象庁OBを「さくら観測員」に委託しています。
同市の観測によると 、2006年以降も、2008年・2009年・2011年・2013年・2015年、2019年で全国トップ開花となったそうです。測候所時代を含めれば、これまでに全国一番となったのは12回となり、高知に次ぐ記録です。なお、2021年は3月12日に開花したそうです。
【独自観測②】高知県宿毛市の取り組み
もうひとつ、非公式ながら独自観測を続けている自治体があります。それは高知県宿毛市 です。宿毛市にも2001年まで気象庁の宿毛測候所があり、測候所が無人化されたことで、さくらの開花発表も行われなくなりました。
宿毛市も全国で一二位を争うほどさくらが早く咲く場所で、非公式ながら日本歴代3位(1990年3月12日)の記録を持っています。測候所の観測は終了しましたが、宿毛市はその財産を継承し、独自に標本木を定め、毎年、さくらの開花発表(5輪以上)を行っています。
2021年はなんと! 3月10日に開花したとのこと。宿毛市は“日本一早い開花!”と鼻息も荒く、開花宣言です。
【独自観測③】北海道松前町の取り組み
これまで紹介してきた宇和島市や宿毛市は気象庁の観測を引き継ぐ形で、さくらの開花発表を行っていますが、全く独自でさくらの開花を発表している自治体もあります。
それは北海道最南端の町、松前町です。松前町はさくらの街として知られ、松前公園には250種類一万本ものさくらが植えられています。
松前町は気象庁の観測が行われている函館地方気象台よりも早く、道内で最も早くさくらが開花することから、全国ニュースとして取り上げられることも多いです。