2009年10月21日更新
片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
【エルニーニョ影響 日照不足で夏商戦ふるわず】
■北日本
平均気温平年差 降水量平年比 日照時間平年比
6月 +0.7℃ 113% 82%
7月 -0.5℃ ◆210% ◆69%
8月 -0.9℃ 75% 80%
◆:平年よりかなり多い(少ない)

北日本の日本海側で記録的な日照不足となった。日照時間の少ない記録としては1946年の観測開始以来、6月が第3位、7月は第1位であった。また、7月の降水量は太平洋側で観測史上最多となった。平均気温は7月、8月と平年を下回り、2003年以来6年ぶりの冷夏だった。


■東日本
平均気温平年差 降水量平年比 日照時間平年比
6月 +0.6℃ 88% 102%
7月 +0.2℃ 113% ◆59%
8月 -0.5℃ 106% 87%
◆:平年よりかなり少ない

東日本は6月に高温、8月に低温となり、気温差の大きい夏であった。一年で最も暑い8月に平年を下回ったため、「涼しい夏」という印象が強い。また、7月と8月の日照時間が平年を大幅に下回った。


■西日本
平均気温平年差 降水量平年比 日照時間平年比
6月 +0.7℃ 72% 113%
7月 -0.1℃ 131% ◆59%
8月 ±0.0℃ 83% 92%
◆:平年よりかなり少ない

西日本の夏平均気温は平年並みであったが、7月の平均気温は2年ぶりに平年を下回った。6月は梅雨前線の活動が弱く、降水量は平年の7割程度だった。しかし、7月は九州北部と中国地方で記録的な豪雨となり、夏全体の降水量は平年並みであった。


■沖縄・奄美
平均気温平年差 降水量平年比 日照時間平年比
6月 -0.3℃ 126% 96%
7月 +0.5℃ 55% 100%
8月 ◆+0.9℃ 66% 106%
◆:平年よりかなり高い

沖縄・奄美では5年連続で暑い夏となった。特に、梅雨明け以降、太平洋高気圧の勢力が強く、8月は記録的な猛暑であった。安定した晴天が続き、台風の影響がほとんどなかったため、7月と8月の降水量は平年を大幅に下回った。


◆7年ぶりにエルニーニョ現象

ペルー沖の海面水温は3月に底を打ったのち、急速に上昇した。エルニーニョ現象の発生は2002年夏~2002/03年冬以来、7年ぶりのこと。アメリカ海洋大気局(NOAA)の観測によると、7月の世界の海面水温は16.99℃と過去約130年間で最高となった。これまでの最高は1998年の16.98℃で、最大級のエルニーニョ現象が発生していた。


◆寒気がたびたび南下、竜巻・豪雨相次ぐ
■7月16日 北海道・大雪山系で遭難

太平洋高気圧が日本列島を広く覆うことが少なく、寒気の影響が強い夏となった。特に7月は寒気の南下に伴って、低気圧が北海道で発達した。7月16日には北海道・大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で悪天候のためツアー客10人が死亡する事故があった。


2009年7月16日9時の地上天気図と雲画像
→気象ダイアリー:2009年07月16日
■7月27日 群馬・館林で竜巻被害、21人けが

14時ごろ、館林市で竜巻が発生した。家屋の損壊は419棟、うち全壊は25棟に上り、被害は幅約50メートル、長さ約6.5キロの帯状に集中した。竜巻の強さは藤田スケールで「F2」。


2009年7月27日9時の地上天気図と雲画像
→気象ダイアリー:2009年07月27日
■8月9日~10日 台風9号と暖湿流

8月9日21時、日本の南で突如発生した台風9号と暖湿流の影響で、四国や近畿で局地的な大雨となった。9日深夜から10日朝にかけては兵庫・香川・徳島で時間雨量100ミリを超える猛烈な雨が降った。兵庫県佐用町では町内を流れる佐用川が増水し、住宅や役場に泥水が流れ込んだ。また、兵庫県境に近い岡山県美作市でも土砂崩れが発生し、民家2棟が倒壊した。


2009年8月10日9時の地上天気図と雲画像
→気象ダイアリー:2009年08月10日
■8月19日 那覇で鉄砲水

14時ごろ、那覇市中心部を流れる水路(通称ガーブ川)で、橋の耐震調査中の作業員5人が流された。川幅は約8メートル、深さは約5メートルで、地元では急に増水する水路として知られていた。1人は救助されたが、4人は約1キロ下流で遺体で発見された。事故当時は那覇周辺では大気の状態が不安定であったが、事故に直接結びつくような雨は観測されなかった。


2009年8月19日9時の地上天気図と雲画像
→気象ダイアリー:2009年08月19日

◆東京 6年ぶりに猛暑日なし

この夏の東京の最高気温は7月16日の34.2℃である。2003年以来6年ぶりに35℃以上の猛暑日はなかった。全国の主な気象官署で一番多かったのは日田(大分)で9日、次いで熊本と岐阜の7日である。熊谷は平年より6日少ない4日、多治見(岐阜)は平年より2日少ない9日など、全国的に猛暑日は平年を大幅に下回った。

東京の猛暑日は1990年以降、増加の一途で、1995年には観測史上最多の13日を数えた。2007年4月1日から、予報用語に「猛暑日」が正式に取り入れられたが、その後東京では皮肉にも35℃を超える日がほとんどない。


◆夏商戦ふるわず、野菜高騰

7月、8月の天候不順の影響で夏物商戦は軒並み苦戦した。7月と8月のビール系飲料の出荷量は1992年以降で最低、外食も長雨で客足が遠のいた。8月の日本マクドナルドホールディングスの売上高は前年比1.2%減だった。また、エアコンの販売台数も7月は前年同月比で32%と大幅減となり、政府のエコ家電購入販売策「エコポイント制度」の効果もほとんどなかった。

野菜は7月の長雨と北海道の低温が響き、値上がりが相次いだ。特にニンジン、キュウリ、ジャガイモは前年同月比で1.5倍から2倍に高騰した。農林水産庁は8月4日、6年ぶりに日照不足・低温等対策連絡会議を設置した。